やっぱり不安でした-。9日のオリックス-中日戦(京セラドーム大阪)で中越え弾を放ったマレーロが本塁を踏み忘れ、三塁打に変更された珍事を受け、10日の同2回戦では本塁生還シーンがにわかに注目を浴びた。

 この日は計3本のアーチが飛び出した。1本目は前日の“主役”マレーロ。完璧なアーチでベースを1つずつ丁寧に回り、最後は本塁をしっかりと踏みしめると、場内からは少しの笑いと拍手が起きた。

 中日も7回にビシエド、ゲレーロが連発。オリックスとは違い、出迎えが三塁側になるため空過する可能性は低かったが、2人とも勢いを落として4つ目のベースを踏んだ。

 前日、捕手松井雅からのアピールプレーを認めた吉本文弘審判(47)は苦悩を語った。打球方向によって変わる4審判のフォーメーションの基本に沿って、一塁から駆けつけ、本塁間近でチェック。最初は目を疑ったが、明らかな違和感があったという。経験に基づいた感性も助けに、毅然(きぜん)とアウトの判断を下した。

 それでも落ち着かない。なにしろ踏み忘れによる本塁打取り消しは、36年ぶり3度目のレアケース。自信は持っていたが、アピールプレーはリプレー検証の運用対象ではないため、自分の目だけが判断材料。試合中も、試合後も「踏んでいる写真があったらどうしよう」と不安に襲われた。

 ただ、日刊スポーツのカメラマンがセンターから写した写真が「証拠」を明確にとらえていた。一夜明け、吉本審判は「ニッカンさんに助けられました」。この写真を見て初めて安堵(あんど)したという。

 また、マスコットのバファローブル、バファローベルの出迎えが、マレーロの走路に影響したという見方があったが、吉本審判は「もしそうだとしても、マスコットは責めないでほしいです。ファンあってのプロ野球。彼らも懸命に、盛り上げようとしたわけですから」と付け加えた。【柏原誠】