「犬よりも速い」という異名を持つ日本ハム大累が、真価を発揮した。同点の8回1死二、三塁で松本が一邪飛。三塁走者の大累は、一塁手のビシエドが本塁を背にして捕球する姿に「ストライク返球は難しい。狙っていました」。50メートルを5秒7で駆け抜け、プロ入り前には飼い犬に勝った走力で勢いよく決勝のホームに足を伸ばした。

 地道に重ねてきた“取材”が生きた。巨人時代から走塁のスペシャリストたちの話を聞いてきた。昨季引退した鈴木尚広氏や片岡に言われたのは「ビビって走らないのが一番ダメ」ということ。日本ハムに移籍後も、後輩の14年盗塁王の西川や15年盗塁王の中島らに走塁の極意を聞いた。共通していたことが1つあった。「勇気です。絶対に決める、走る。最後は気持ちなんだと分かった」。

 勇気を持ってスタートを切ると、試合後にはプロ初のヒーローインタビューも待っていた。インタビュアーから「ナイスランでした」とマイクを向けられると「まさか僕が呼ばれるとは…うれしいです」。苦笑いしたが、価値ある走塁に栗山監督は「いい仕事だったね」と、たたえた。前日14日に続く代走での決勝得点で、2カード連続勝ち越しに貢献した。【木下大輔】