「ハマのジャイアン」が、プロ初安打初本塁打を放った。

 DeNA白根尚貴内野手(24)が7回、代打起用で出場。大量リードで勢いに乗るチームに押されるかのように、振り抜いた2球目を左翼スタンドへ運び2ラン。「みんな打っていたので、その勢いに乗りたかった。今季2打席出て打てていなかった。直球に振り負けないようにバットを振ることだけを考えた」。お立ち台では夢見心地で言った。

 「強く振って球が当たってくれたことしか覚えていません!」。プロ6年目でようやく打てた1本がアーチを描いた。ソフトバンクにいた15年オフ、育成契約を断り合同トライアウトに挑戦。退路を断ってDeNAに入団した苦労人だった。「あのときはもう野球界に戻ってこられないかもしれなかった。今、本塁打を打って(決断は)よかったと思える」と、話しながら目に涙を浮かべた。

 島根・開成高時代は150キロを投げる右腕で甲子園にも出場した。11年ドラフト4位でソフトバンクに入団すると、度重なるけがに見舞われた。3年目の14年オフに支配下登録から外れ育成契約。2軍に上がっても3軍へ落ちる恐怖感と戦ってきた精神力は、今になって武器にもなっている。「3軍に落ちるプレッシャーがある中でやっていた。それに比べれば」と、DeNAでの地道な練習も苦にしなかった。

 今月14日に1軍登録され、わずか4日、3試合目でインパクトを残した。抜てきしたアレックス・ラミレス監督(42)も「右の代打を育てていくことが重要。白根にはこれを自信にして、1軍レベルで活躍できる選手になってほしい」と期待を寄せる。

 身長186センチ、90キロ。その体格と風貌から「ハマのジャイアン」と言われる男は声を震わせながら言った。「母が手の手術で入院している。テレビ越しにでも、野球やっている姿を見せられたら、少しでも元気になる」。心優しきハマのジャイアンは、支えてくれた母親に、やっと打ったでっかいホームランをささげた。