悪夢のような敗戦だった。2位阪神が首位広島に連敗し、ゲーム差を今季最大に並ぶ「9」に広げられた。7回まで3-3だったが、8回にリリーフがつかまって大量8失点。先制2点打を放っていたルーキー糸原健斗内野手(24)が飛球を追って右膝を負傷し、担架で運ばれる惨劇まで起きた。戦線離脱は確実な状況で、チームでは前日18日に糸井が右脇腹痛で登録抹消されたばかり。3位DeNAが0・5ゲーム差に迫る踏ん張りどころを迎えた。

 悪夢の8回に、追い打ちをかけるような悲劇が起こった。バティスタの高く舞い上がった飛球を、遊撃糸原がセンター方向に追いかけた。のけぞるような姿勢で捕球しようとしたが、グラブに当てた。落球したボールをつかもうとしたが、この時、地面についた右膝をひねった。苦悶(くもん)の表情を浮かべながら、立てなかった。担架が呼ばれ、横たわった。自力で歩けない。糸原は車椅子でクラブハウスへ。右膝付近をアイシングで固め、大阪市内の病院へ向かった。

 糸井に続き、ルーキーの戦線離脱は確実な状況になった。糸原はここまでめざましい活躍を見せていた。2回に先制の2点タイムリーを放つなど、マルチ安打。7回も相手のエラーを呼び、出塁していた。7月は9試合で打率4割5分8厘。金本監督は「調子がいいだけに、痛い。まだ報告は来てないから」と言葉少なだった。新人ながら、落ち着いたプレーで遊撃をこなしていた。代役は2軍調整中の北條とみられるが、相次ぐ負傷はあまりにも痛い。

 首位決戦は予期せぬ暗転で幕を閉じた。自慢のリリーフ陣が崩壊し、糸原のケガ。終わってみれば、今季ワーストの14失点という大敗だった。金本監督は努めて冷静に話した。

 「わずかな差ですよ。7回に越されて、その裏、すぐに追いついた。確かに個々の力は負けていると思うし、力の差、これは成績を見れば分かると思うけど…。何とか追いつくには練習しかない。こっちも個々の力を上げて、対抗していくしかない」。

 広島の強さは認めた。それでも前を向くしかない。試合終了直後に、ベンチ裏で緊急ミーティングが開かれた。輪の中で、指揮官がナインを鼓舞した。「あきらめずに、上を向いていく」。背水の3連戦を負け越して、ゲーム差は「9」に。早ければ、25日にも自力優勝の可能性が消滅する。「まだまだ。絶対にファイティングポーズだけは崩さない。向かっていくだけ」。金本監督は語気を強めた。まだ何も終わってはいない。【田口真一郎】