ようやく勝った。ヤクルト由規投手(27)が5回1安打2失点と粘りの投球で阪神に勝利。連敗を14で止めた。4四球と制球が定まらなかったが、開き直りを武器に踏ん張った。救援陣も4投手で無失点リレー。打線は今季初めて4番を打った山田哲人内野手(25)が初回に15号2ランを放つなど奮起。前倒しで昇格させた新外国人のリベロを5番三塁で先発出場させるなどテコ入れが実を結び、7月初勝利となった。

 14連敗の長雨がやみ、神宮にヤクルトファンが差す色とりどりの傘が咲き乱れた。喜びの東京音頭を聞き、お立ち台に上がった由規は笑顔を見せた。「僕ら以上にファンが待っていた勝利。ファンの皆さま本当にすいませんでした。毎日、熱い声援は僕らにも届いていました」とチームで7月初めての白星をかみしめた。

 簡単には勝てなかった。1回から制球が定まらない。先頭打者の西岡に四球を与えると、5回まで4四球。2点先制した直後の2回には1死から2者連続四球で一、二塁。二塁へのけん制を悪送球し、二、三塁と自ら傷口を広げた。直後に阪神大和をスライダーで詰まらせたが、打球は中前でポトリ。2点を失った。それでも「ここで返されても、同点でもうけものかな」と落ち着いていた。

 開き直った。「大体3ボールになる時は良いところを狙おうとしている。ちょっとした開き直りがいい具合に決まってくれた」。きっかけは6月1日のオリックス戦。1点リードの6回2死一塁から3者連続四球で押し出し、敗れた。「フォアボールを出しちゃいけないと思うと縮こまる。フォアボールは出るもの。守りに入って後手に回るのはやめよう」と四球への恐怖心を消し、腕を振った。

 験も担いだ。登板2日前、勝ち飯を胃袋に収めた。「あやかれるものにはあやかろうと思った」と「豚キムチうどん」をすすった。将棋の藤井四段が最多連勝記録を作った際の昼食と全く同じ勝ち運のあるメニュー。東京・渋谷区にある「みろく庵」から出前を取り、準備を整えた。

 連敗街道を抜け、真中監督は「よく5回まで抑えた」と評価。胸をなで下ろしたが「プロなので、まだ1つなので喜んじゃいけない。また明日から頑張りたい」と気を引き締めた。由規は「まだまだ後半戦は始まったばかり。取り返すチャンスはいくらでもある」と借金27からの浮上へ、前を向いた。【島根純】