信じたくない。ヤクルトが作る歓喜の輪を、大野が、岩瀬がぼうぜんと三塁ベンチから眺めた。中日が10-0からの逆転負け。2試合連続の延長10回サヨナラ敗戦。まさに悪夢だった。

 まさかの展開、との質問に森監督は「本当だな」。雨の中、スタンドからの励ましには小さく手を上げた。「投手コーチを代えろ!」「恥ずかしくないのか!」と怒声も飛んだが顔色一つ変えなかった。

 打撃陣が今季初の2桁得点。2回に藤井の2ランが飛び出すなど、5回までに10点を奪った。先発大野も快調に0点を並べた。今季ベストゲームとも思えた。「6回」までは…。

 大野は7回に中村に2ラン、8回はバレンティンに2ランを浴びて6点差。さらに四球を出したところで降板した。2番手福谷も勢いを止められず、9番中村の左前打で4点差。ベンチは勝ちパターンの岩瀬投入を決断した。だが頼みの左腕も2連続適時打を浴び、又吉まで送り込んだ。右腕は山田に2点左前打を許して、この回8失点。ついに追いつかれた。

 延長10回、2イニング目の伊藤が大松にサヨナラ弾を許した。「不本意な1球でした」。大野は「後ろの投手に申し訳ない。それだけです」と、休めるはずのブルペン陣に謝った。近藤投手コーチは「選手を責めるわけにいかない。こうなったのはすべて僕の責任」と背負い込んだ。

 前日はミスの連発で点を与え続け、延長10回、8-9のサヨナラ負け。23日の広島戦(マツダスタジアム)の12失点から3試合で32失点だ。92試合時点で借金11は最下位になった昨年より2つ悪い。悪夢を引きずり、昨年のように落ちていくのか。試練が訪れた。【柏原誠】