幕切れはあっけなかった。緊迫の9回裏。中日のアピールプレーにより試合終了を迎えた。

 1死一、二塁で坂本勇の打球は右中間への大飛球。抜ければ逆転サヨナラ負けの可能性が高かった。三塁ベンチにいた中日森脇内野守備走塁コーチは「あの場面はドーム内の全員が(中堅)大島が捕れるか、一塁走者がどう動くかを見ていた」と振り返る。

 大島が背走しながら好捕。2人の走者は、それぞれ帰塁した。二塁走者の陽岱鋼はハーフウェーから二塁に戻ってタッチアップで三塁へ。一方、一気の生還を狙っていた一塁走者の代走重信は、もう二塁を回っていた。大島が捕球すると、一塁に一目散に逆走した。だが、中日ナインもベンチも見逃していなかった。重信は二塁を踏まずに一塁に戻っていた。

 一塁ビシエドは確信を持っていた。カットに入るため、一、二塁間に移動していた。「踏んでいなかった。正面で見ていたよ。ベンチからもそう声が出ていた」。まず、遊撃京田が二塁塁審にアピール。だがタイムがかかっている間はアピールを実行できない。岩瀬にボールを戻し、プレー再開の声を聞いた岩瀬はプレートを外して二塁に送球。アピール成立で、3アウト目を奪った。

 中日は6月9日のオリックス戦(京セラドーム大阪)でも同様に、柵越え打を放ったマレーロの本塁踏み忘れに捕手松井雅が気付き、アピールプレーで三塁打にしていた。

 今回は岩瀬の新記録と試合の勝ち負けがかかった、さらに緊迫した状況だったが、基本に忠実な行動で、大ピンチをしのいだ。