阪神鳥谷が246打席ぶりの1発を放ち、自力優勝の可能性を復活させた。1点リードを追いつかれた2回無死。右腕星の内角143キロ直球を右翼ポール際中段席まで到達させた。推定飛距離130メートルに届こうかという3号勝ち越しソロ。「まぐれ、まぐれ! 狙って打てたら、もっと打ってるよ」と照れ笑いした。

 2日前の22日ヤクルト戦では3者連続アーチに期待がかかる中、中堅フェンス直撃の二塁打で「力不足です」と苦笑い。前日まで245打席ノーアーチは自身2番目の長さだったが、6月6日オリックス戦以来の1発で自虐コメントは撤回だ。金本監督からも「あんな上段まで打って。らしくない、うれしいホームラン」と褒めたたえられた。

 5月24日巨人戦で顔面に死球を受け、鼻骨骨折。「すぐに思い出したよ。因果応報だなって」。聖望学園時代の苦い記憶がよみがえった。3年夏の埼玉大会終盤、投手として顔面に死球を当ててしまったことがある。相手は流血して救急搬送された。それでも鳥谷は謝罪の気持ちを胸に、強く内角に投げ続けたという。学生時代から周囲のざわつきには動じない。

 通算2000安打まで残り11本。偉業達成へ盛り上がりがピークに近づく中、試合を決める1発を決めるのだから頼もしい。自力Vの可能性が復活し、貯金は今季最多の13。首位広島とのゲーム差は6・5に縮まった。「月間で(貯金)3つを目標にして、最低、それは守るようにやっていきます」と指揮官。虎は、鳥谷は、地に足をつけて戦っていく。【佐井陽介】