中日小笠原がプロ初の完投勝利だ。9回2死一塁、陽岱鋼を直球で三ゴロに仕留めると、小さく左手を握りしめた。プロ最多の151球を投げ、9回を7安打2失点で今季5勝目。疲れを問われると「そんなの吹っ飛びました」と念願の完投をかみしめた。

 投げきったのは全国制覇した15年夏の甲子園決勝、仙台育英(宮城)戦以来。19歳左腕は「7回を終わってベンチに帰ってきたときに、監督に『行きます』とその気持ちは伝えた。常に苦しかったけど、完投ができて良かった」と晴れやかな表情だった。

 登板予定だった17日の阪神戦が台風18号の接近で中止。ナゴヤ球場に戻り汗を流し「今年中に完投をやってみたい。やりたいです」と意気込んでいた。6月24日巨人戦(東京ドーム)、プロ初完封まであと2アウトのところで、マギーに2ランを浴び交代。白星こそつかんだが、完投への思いは募っていった。

 森監督は「本人が(9回まで)行かせてと、しつこいから。ブルペンを休ませるのもいいかなと。四球、本塁打もあったけど、最後(9回)が一番良かったんじゃないの」と目を細めた。小笠原は「1つの通過点だと思う。通らないといけないこと」。新たな景色を見るべく、1つの山は越えた。【宮崎えり子】