日本ハムの背番号「6」が、レジェンドの引退試合で奮起した。中田翔内野手(28)がロッテ戦(ZOZOマリン)で、3試合連続打点をマークした。1点を追う7回無死一、二塁から同点の左前打。5回にはロッテ先発涌井からチーム初安打となる中前打を放ち、2試合連続の複数安打。チームは延長12回サヨナラ負けも、井口と同じ背番号「6」が意地を見せた。

 同じ背番号「6」が揺れる球場で、中田がレジェンドの姿を焼き付けた。2回の守備。引退試合のロッテ井口が、左前打で初出塁。一塁に就いていた中田は「お疲れさま。いろいろありがとう」とメッセージを受け取った。「もっといろんなお話を聞きたかった。選手としても男としても、すごい偉大な方」。威風堂々とした、背番号「6」の大先輩。別れを実感し、はなむけの一打を放つと心に決めた。

 1点を追う7回無死一、二塁。ロッテ3番手南の初球134キロのフォークを、迷わず狙った。「相手の投げミスだからね」。振り出しに戻す同点の適時打。「勝負強い打撃。逆方向に長打を打てる」と憧れる井口に負けじと左前に運んだ。3試合連続打点&2試合連続マルチ安打。打線を活気づけた。

 満身創痍(そうい)の体を押して、打席に立つ。7日楽天戦で受けた死球による左手甲の痛みは鈍く残ったまま。試合前練習はトレーナーに付き添われながら、練習の一部は別メニュー調整が続いている。この日は8回に途中交代も、三塁側ベンチから井口の姿を目で追いかけた。「すごいなという目で、ずっと見させてもらった。ああいう選手を目指したい」。劇的過ぎる同点弾には「意地を勉強させてもらった」と感銘を受けた。

 井口を象徴するシーンに、胸は熱くなる。試合前、グラウンドであいさつに行くと「気持ちよく、優しくあいさつしてもらっている」。アマチュア時代に接点はないが、球界を代表する厚い人望にひきつけられた1人だった。「引退試合で一緒に試合が出来たことは、すごい幸せなこと」。華やかな幕切れを惜しみ、大きな背中から糧を見いだしていた。【田中彩友美】