西武辻発彦監督(58)は正面から敗戦を受け止めた。楽天に屈し、6年ぶりのCSファイナルステージ進出はならず。「残念です。それしかね…。しのぎあいの中で(5回に)1点取った時は、よしという気持ちになったけど…。試合は絶対勝ち負けがあるから」と自らに言い聞かせるようにうなずいた。

 「同志としか思っていないから」という選手たちは懸命に勝利を目指した。5回は栗山、中村の連打から1点をもぎ取った。4点差の9回には先頭の主将浅村が左翼席に1発をたたき込んだ。リリーフ陣も踏ん張ったが、8回のシュリッターの2被弾が重かった。指揮官は「この悔しさをしっかり反省して、来年に向けていかないといけない」と力を込めた。

 監督1年目は悲しみからの船出だった。春季キャンプ初日の2月1日に父廣利さんが86歳で他界。始動1日目の悲報だったが「親の死に目に会えない世界で戦っていると思っているから」と覚悟を決め、指揮を執り続けた。母は現役時代に亡くなった。今季の試合前の君が代斉唱時は、天国の両親へ「今日も頑張るから」と決意を伝え、戦いに臨んできた。

 悲しみは再び襲ってきた。今年6月、森慎二投手コーチが急逝。ショックは計り知れなかったが「毎日試合はある。感傷に浸っている時間はない。ただ、選手それぞれが胸に置いて戦ってくれるはず」。試合前と後には、必ずベンチに掲げられた同コーチのユニホームに手を添え「優勝しかない」と前だけを見据えてきた。

 ファンの大声援が大きな支えだった。「選手時代とは感じ方が違うんだよ。ベンチで聞くとあらためてありがたさを実感する」。ゲーム直前、スタンドに投げ入れるサインボールには、開幕戦から「ありがとう」と添えてきた。この日も「最後まで応援が力強かった」と3万1755人の歓声に感謝した。選手とともに戦い、3年連続Bクラスから2位に押し上げた1年目。「今は選手たちがよくやったという気持ちしかない。来季成長してどんな姿をみせてくれるか楽しみです」。来季は2年契約の最終年。築いた土台から、さらなる飛躍を目指す。【佐竹実】