雨を制するものが、セ界を制す! 広島がクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ初戦をとった。終始雨が降る中、次第に雨脚が強まり、6回開始前に降雨コールド。5回に1番田中広輔内野手(28)が放った中前の2点適時打が決勝打となった。3打席で計24球を投じさせ、いやらしい広島野球を体現。天候を味方につけた。アドバンテージを含めて2勝。今日にも王手をかける。

 芝生にまとわりついた水を、田中の打球が吹き飛ばした。5回2死満塁。ヘルメットの先から落ちる水滴には目もくれず、田中が高めのフォークを捉えた。打った瞬間に右拳を握る。DeNA桑原の悪送球で二塁に達し、手をたたいて喜んだ。「練習から投手の足元を狙っていた。何とかしたかった。よかったです」。ベンチと、ポンチョの赤に染まったスタンドが、総立ちで田中をたたえた。

 試合開始前から雨が降っていた。マウンドのシートがはがされたのはプレーボール直前。小雨は次第に勢いを増し、4回からは内野に水が浮き始めた。5回には雨脚が強まり、いつ中断しても不思議ではない状況。好投の先発薮田に応えるラストチャンスで、決勝点を導き出した。続く菊池もヘッドスライディングで遊撃への適時内野安打。「駆け抜けるより速いし、ケガのリスクも少ない」と、とっさの判断が光った。

 ボディーブローが効いた。田中は1回に9球を投げさせて四球で出塁。空振り三振に倒れた3回も、9球を投げさせた。決勝打の場面も6球目だった。打ったファウルは計10球。安打以外でも濃い内容に「1番の役割はしっかり出来たかな」と胸を張った。「シーズン中でも同じ状況でやっている」と雨中の戦略はインプットされていた。

 5回終了時からの整備でシートがかぶせられ、場内に中断のアナウンス。結局再開することはなく降雨コールドで勝った。CSファーストステージの甲子園での激闘があっただけに、田中は「もちろんやるつもりだった。ただこの状況では…。審判は勇気を持って決断してくれた。ありがたい判断だった」と汗をぬぐった。

 CSまでの期間で雨中のノックを敢行するなど、万全を期した緒方監督も「去年同様、キーマンになってくれそうな感じがする。初戦がとれたのは大きいね」とうなずいた。雨粒もDeNAも吹き飛ばし、これでアドバンテージを含めて2勝。雨をも制したセの王者が、勢いに乗る。【池本泰尚】

 ◆最短イニング 広島が5回降雨コールドで勝利し、アドバンテージの1勝を含め2勝とした。プレーオフ、CSでは14年セ・リーグ1S<2>戦で阪神の勝ち上がりが決まったため、規則による「12回表終了コールド」があったが、天候のコールドゲームは初。日本シリーズでは過去4度ある。コールドの完封勝ちはポストシーズン史上初で、5回は最短イニング勝利だ。日本シリーズ出場をかけたプレーオフ、CSで2勝0敗は、3戦先勝時代を含め過去20度あり、すべて日本シリーズに出場している。