史上初のCSファースト&ファイナルステージ先頭弾だ。楽天茂木栄五郎内野手(23)が初回先頭で、左越えの1発を放った。西武とのファーストステージ第2戦でも、先頭打者弾をマーク。2年目のリードオフマンの活躍で第1戦を勝ち取った。これで1勝1敗。下克上日本一へ、最高の幕開けとなった。

 茂木が迷いなく、振り切った。1回先頭カウント1-1からの3球目、東浜が投じる初めての直球だった。高め143キロをグッと押し込んだ。プレーボールから約45秒。待望の先制点が左翼席で着弾した。3日前、西武とのファーストステージ第2戦でも先頭打者弾を放った。「短期決戦は何が起こるか分からない。先制点欲しい場面で取れたこと大きい。史上初は知らなかった」と喜べば、梨田監督も「彼の魅力。相手に強烈なインパクトを与える。勢いが出る」と深くうなずいた。

 最初の直球を狙い打った先頭弾は、父龍夫さん(65)から授かった人生訓のたまものだった。父は、スマートフォン全盛の現代でも携帯電話を持たない。「便利だからこそ、頼ってしまうと、人との約束がおろそかになる気がして。何日の何時にどこで会おう、という決めごとがあいまいになる。簡単にキャンセルもできる。子供たちには、約束はきっちり決めて、責任を持つということを教えてきました」と息子に信念を伝えてきた。

 時代を逆走してもいい。決断を曲げるな。骨太な父の教えに育てられた茂木は「本当に厳しい人。礼儀やあいさつは、かなり怒られた記憶がありますね。でも物事への決断という点を厳しく言われた。ブレるなとか、1度決めたことはちゃんとやれとか」と幼少期を振り返る。

 15年ドラフト3位で入団した昨季、1年目の年に「ファーストストライクの直球は必ず打つ」を決めごとにした。同時にどんな状況でも「フルスイングする」と自分のルールを立てた。2年目でも変わらない、貫き通す鉄の意志。CSファーストステージから4戦連続で出塁と勢い止まらない。23年間の集大成が、史上初のアーチを生んだ。【栗田尚樹】