女房役のパパが家族に最高の勇姿を届けた。DeNA嶺井博希捕手(26)が先発井納を含む7投手の完封リレーで勝利に導いた。投手の特徴を引き出した好リードで虎の子1点を守り抜いた。2回2死からは、中前打で出塁し、唯一の得点をもたらした。昨季のクライマックスシリーズ(CS)での“出来事”を胸に秘め、堂々たるプレーで父親としての役割も体現した。

 扇の要に陣取った嶺井が女房役をまっとうした。9回2死で打者エルドレッドを迎える。マウンドの山崎康に、3球続けて高めの直球を要求。追い込むと、ツーシームと変化球をはさみ、最後は強気の直球で空を切らせた。こん身のガッツポーズで勝利をかみしめ、ハイタッチの輪に加わった。「投手のボールが良かった。井納さんがストレート、須田もストレート、山崎もストレート。投手を信じて投げさせた」。3者凡退は4回と9回だけ。我慢強く耐え忍び、守り抜いた。

 去年よりも1人増えた家族が力をくれた。昨年10月10日。途中出場した巨人とのCSファーストS第3戦で、延長11回に値千金の決勝打を放った。その当日、夫人の陣痛がちょうど始まった。「奥さんが頑張ってくれた。自分だってという思いもありました。あの日は、思い出深い日になりました」。試合直後、横浜市内の病院に駆けつけ、夜が明けた11日午前に第1子長男が誕生した。

 この日、夫人と愛息子がスタンドから観戦。7回無死一塁、犠打を狙う石原の打球を、素早く処理して、迷いなく捕ゴロ併殺を完成させた。高校、大学いずれも日本一を勝ち取った勝負勘をいかんなく発揮。「10-0でも10-9でも、1-0でも勝ちは勝ち。それでOKです。投手の良いところをうまく引き出せた」と胸を張った。家では大黒柱を担うパパが、大舞台で、頼もしすぎる女房役として投手陣をけん引した。【為田聡史】

 ▼プレーオフ、CSの1-0勝利は、14年1S第1戦阪神以来7度目。決勝点をたたき出したのは投手の井納で、プレーオフ、CSで投手のV打点は10年ファイナルS第2戦吉見に次いで2人目。日本シリーズで投手のV打点は稲尾(西鉄)足立(阪急)2度、堀内(巨人)3度、山田(阪急)工藤(西武)の5人、8度あるが、1-0試合ではなし。投手の1-0決勝打はポストシーズン史上初めて。

 ▼DeNAは7投手が登板。日本シリーズを含めたポストシーズンで7投手による完封リレーは07年CSの1S第1戦中日(7-0)と並ぶ最多人数。7投手による1-0完封リレーはポストシーズン史上初。