社会人のドラフト1位候補には、ヤマハ・鈴木博志投手(20=磐田東)の他にもう1人の鈴木がいる。日立製作所・鈴木康平投手(23=国際武道大)は、大学4年時は指名漏れ。そこから2年で評価を大きく上げてきた。186センチ、88キロの体から、最速151キロの直球と100キロ台のカーブなどで緩急を操る先発型右腕だ。

 2年の月日が鈴木を大きく変えた。15年のドラフト会議は指名されずに終わった。「かからないだろうと思っていたので、重く受け止めませんでした」。だが、日立製作所に進んで迎える今回は、1位候補と騒がれるまでになった。

 ウエートトレーニングや食事面など社会人の整った環境下で大きく成長した。体重が74キロから88キロへ増量。「大学時代のスキニーパンツがはけなくなった」ほど鍛えられた。直球の最速は3キロアップの151キロに達した。その分で「カーブが有効になった」という。同じ腕の振りから40キロ近い緩急差を操る。今年になってフォークを習得しさらなる球種にも挑戦と、投球の幅は広がるばかりだ。

 大舞台の経験は少ないが、昨年の日本選手権や今年の都市対抗で先発した。ともに敗れたものの「緊張する環境で投げさせてもらい成長できた」。心も鍛えて、プロ球団の評価を上げてきた。

 ロッテ諸積スカウトは「まだ伸びしろがある」と評する。目標の選手に日本ハム大谷を挙げる鈴木も「165キロは無理だけど、150キロ後半はいけると思う。まだ体をうまく使えていない感覚がある」と向上心は尽きない。

 成長を確かめたい相手がいる。日本ハム上沢だ。専大松戸からプロ入りした右腕とは、千葉明徳3年の夏に投げ合い、引き分け再試合の末に敗れた。「バットに当たる気がしなかった。こういうヤツがプロに行くんだなと」。それが今では「対戦できたら楽しみ」と思えるようになった。

 日立製作所からのプロ入りとなれば、12年ヤクルト7位の大場以来。また、ドラフト後の日本選手権に向けて「優勝しかない」と力を込めた。育ててくれたチームを世にアピールし、恩返しとする。【石原正二郎】

 ◆鈴木康平(すずき・こうへい)1994年(平6)1月21日生まれ、千葉県鎌ケ谷市出身。小1から野球を始める。千葉明徳では甲子園出場なし。国際武道大では4年春に奪三振王、同秋に最多勝など活躍。186センチ、88キロ。右投げ右打ち。趣味は映画観賞。家族は両親、兄2人、姉。血液型A。