主砲で王手だ! DeNA筒香嘉智外野手(25)が今季のクライマックスシリーズ(CS)1号を放った。3点を追う4回無死、広島薮田の外角直球を左翼席へ放り込んだ。チームに勇気を与えた待望の1発が、反撃ののろしとなり、鮮やかな逆転勝利を飾った。通算成績を3勝2敗とし98年以来となる日本シリーズ進出が、今日24日にも決まる。

 広島の夜空を豪快に切り裂いた。筒香がバットをしならせた。3点を追う4回無死、広島薮田と対峙(たいじ)。2ボールからの3球目、143キロ外角球を仕留めた。打球はスライス軌道で左翼席の看板にガツンと直撃。「ホームランは流れが変わりやすい。強い打球を狙っていた」と悠々とダイヤモンドを周回する姿でベンチ全体の息を吹き返させた。

 逆境を受け入れる精神が苦境をはね返す強さを生む。18日の第1戦、5回降雨コールドで落とした。試合直後、ナインをブルペンに集めた。「悔しい気持ちはみんなある。いらだち、もどかしさもある。でも、もう終わったことは変えられない。俺たちにできることは、4つ勝つことだけ」。ずぶぬれのまま熱く冷静に語りかけた。15日のCSファーストステージ第2戦は、泥だらけになりながら試合を決行した。その経験があるからコールドゲームに納得する選手は1人もいない。主将のひと言でチームが再び前を向いた。

 CSに入って28打席目でようやく1発が飛び出した。試合前の時点でファイナルステージは10打数1安打の打率1割。自らの不振を受け入れ頭を整理した。「いつもと同じ攻め方なのか、短期決戦の攻め方なのか。自分の感覚にずれがある」と頭と体の感覚を合わせることが改善への1歩だった。試合前練習では、自称最速147キロの吉見打撃投手にサイン用の柔らかいボールで力の限りの速球を投げてもらった。「体のキレを出したかった。裏方さんにもサポートしてもらっている。チームみんなで戦っている」と強調した。

 日本一になった98年以来19年ぶりの日本シリーズ進出に王手をかけた。主将就任3年目。間違いなく筒香が先頭を引っ張ってきた。「去年は去年。このシリーズが始まる前から『横浜に帰ろう』ってやってきた。誰もが、こんなところで負けるとは思っていない。僕たちは日本一を目指している」と間髪入れずに言い切った。セ最強を誇る広島をなぎ倒し、チームを引っさげて本拠地・横浜へ戻る。【為田聡史】