日本ハム大谷翔平投手(23)の大リーグ移籍のために、異例の「大谷ルール」が誕生した。日本野球機構(NPB)、米大リーグ機構(MLB)、大リーグ選手会による新ポスティングシステム交渉が22日、合意した。新制度は18年からで、今オフの大谷には旧協定通りの譲渡金2000万ドル(約23億円)が採用される。交渉期間は従来の30日間ではなく、12月2日(米国時間1日)から23日(同22日)の21日間になり、MLB30球団には二刀流起用などを訴えるプレゼンテーション期間が設けられた。

<解説>

 「大谷ルール」に注目が集まる中、18年オフに導入される新たなポスティングシステムが決まった。旧制度との最も大きな違いは、大リーグ球団が日本球団に支払う譲渡金が、上限額2000万ドルから、選手と大リーグ球団が交わす契約総額によって変わる変動制になったことだ。

 例えば来オフ、同システムでの大リーグ挑戦を希望する西武菊池が4年総額6000万ドル(約69億円)で移籍したと仮定する。

 西武球団に入る譲渡金は、約1088万ドル(約12億5000万円)。従来は上限額2000万ドルまで設定できたため、満額を支払う意思のある大リーグ球団があれば、新制度より多くの額を受け取れた。一方で大谷クラスの能力ある選手が10年総額3億ドル規模の超大型契約を結べば、譲渡金は旧制度を大きく上回る50億円近くまで跳ね上がる。もちろん菊池も、もっと大きな契約を結ぶ可能性がある。大リーグ側は、選手の市場価値に合わせて、適正額に近づくような制度を求めてきた。

 ただ新制度では、日本球団は選手が契約を交わすまで譲渡金の額が分からない。低すぎる場合など、ポスティング移籍を破棄できる「撤回権」を求めて交渉。NPBとMLBの間では約1カ月前に合意したが、その後「撤回権」に対して強く反対したのが大リーグ選手会だった。

 これにより、日米間で1度合意した新制度の交渉が難航。最終的には、デッドライン直前に日本が「撤回権」を手放す代わりに、契約総額に対して一律15%だった金額を、金額に応じて15~20%とする歩み寄りがあった。4年総額6000万ドルに当てはめると、約2億円の上積みになる。

 交渉は22日午前10時が期限だった。「撤回権」を手放さなければ、ポスティングシステム自体が失効する危険性があった。同システムは、海外FA権、アマチュア選手の直メジャーと関連する。システムがなくなれば日本球界を経ずに直接大リーグを目指す選手が増える可能性があり、現在9年間の海外FA権取得までの期間を短縮する議論も活発化するかもしれない。球界が保つ“バランス”に変化を及ぼす可能性もあったが、21年までの3年契約が決まった。【NPB担当・前田祐輔】