虎に激震-。阪神から国内FA権を行使した大和内野手(30)がDeNAへの移籍を決断したことが29日、分かった。

 懸命に残留要請を続けてきた阪神、オリックスと3球団による争奪戦が続いていたが、新天地での挑戦を選んだ。近日中に発表される見込み。大和を来季遊撃レギュラーの有力候補と位置づけていた虎にとっては、悲しすぎる結末となった。

 大和が新たな挑戦を決断した。8日にFA宣言してから21日。熟考に熟考を重ねた結果、DeNAに移籍する意思を固めた。

 球界屈指の守備力を誇る名手。国内FA権を行使した後、熱心に調査を続けていたDeNA、オリックスが獲得に乗り出した。「自分みたいな選手に、ほしいと言ってくれて…。本当にありがたい話です」。一方の阪神もシーズン中から懸命に残留要請を続け、争奪戦の行方は先が見えなくなっていた。

 条件面では3球団とも最大限の評価を与え、横一線といえる状況だった。阪神は4年総額4億5000万円前後の大型契約を用意。オリックスは3年総額3億円に加え、伝説的OBの福本豊、糸井嘉男が背負った7番も準備。DeNAも最終的には4年で総額4億円をはるかに上回る条件を提示したとみられる。

 大和が最後に重視したのは、いち野球人として最も成長できる環境だった。もともと金額面には重きを置いておらず、在京、在阪の志向もなかった。国内FA権を初取得し、30歳の誕生日を迎えた17年。自分に一番刺激を与えられる舞台がDeNAにあると、判断したとみられる。

 DeNAから「レギュラー確約」は与えられていない。遊撃には今季全143試合に出場した倉本がレギュラーとして君臨し、田中浩、石川らがひしめく二塁にも23歳柴田が台頭したばかりだ。ただでさえ、今季リーグ3位から日本シリーズまで躍進した勢いのあるチーム。厳しい競争が待つことを十分に理解した上で、大和は覚悟を決めた。

 熟考期間中、心の底から消えなかったのは12年間成長させてくれた球団、温かい声援を送り続けてくれたファンへの愛着だった。「プロ入り当時は5年間クビにならずにいられるかな、と考える立場だった」。そんなスタートからFA権を取得するまでに育て上げてくれた歴代首脳陣への感謝は尽きない。誠意を持って慰留に努めてきた担当者への思いもあり、最後まで移籍か残留かで悩み抜いたが、この日、退路を断った。

 今後は近日中に意思を表明する見込み。大和を来季の遊撃レギュラー筆頭候補としていた虎は、糸原や北條を鍛え上げる方向に大きくかじを切ることになる。

 ◆大和(やまと)本名・前田大和(まえだ・やまと)。1987年(昭62)11月5日、鹿児島県生まれ。樟南で1年夏、3年夏に甲子園出場。05年高校生ドラフト4巡目で、内野手として阪神入団。1年目のオフに登録名を変更。12年から3年連続で外野手として100試合以上に出場し、14年に外野手としてゴールデングラブ賞獲得。昨オフにスイッチヒッターに転向した。今季は二塁で48、遊撃で56試合、外野で5試合に出場。内外野を問わない、圧倒的な守備力は球界屈指。177センチ、69キロ。右投げ両打ち。