楽天銀次内野手(29)が、一塁部門でゴールデングラブ賞に輝いた。プロ12年目で初受賞。その背景には、4年ぶりの二塁守備の存在があった。立花球団社長の一声で始まった挑戦。84試合の二塁守備で培った新たな意識が、タイトルをもたらした。年末に担当記者が振り返る連載の第4回「今年の楽天」は、リーグ屈指の好打者・銀次の守備に迫る。

 17年開幕戦、3月31日オリックス戦(京セラドーム大阪)。銀次は二塁へ向かった。本職の一塁ではない。昨季は125試合全て一塁の守備だったが、今年の開幕カードは3試合全て二塁での起用となった。公式戦では13年以来4年ぶり。「やっぱり難しさはある。いつもと違う感じはあるけど、やるしかない」と強烈なゴロに飛びついた。

 時は、少しさかのぼる。開幕前の2月26日に行われた西武との練習試合。「3番・一塁」で先発出場したが、途中から二塁に回った。前日25日に梨田監督から「セカンド起用」を伝えられていた。「誰かがけがをしても大丈夫なように、準備をしておく意味だと思う」と話したように、リスクマネジメントだと理解していた。

 実は、立花球団社長の提案が始まりだった。一塁手には他に今江、アマダーがいた。だが、二塁手は藤田以外、他の選手の台頭が乏しかった。相手投手との兼ね合い、打順のバランス、さまざまなバリエーションを想定し、打力のある銀次が二塁もこなせることはチームにとってプラス。同社長の「銀次を二塁で使ってみたら」という一声を梨田監督ら現場が採用した。

 毎年のように打率3割近くをマークする。世間のイメージは「打の銀次」。しかし、打撃だけだという印象を持たれているなら、払拭(ふっしょく)したかった。

 銀次 二塁に挑戦することになった。守備への見方は変わるはず。天然芝のKoboパーク宮城は、人工芝に比べて守備が難しい。これまで以上に負担はかかるけど、こういう年にゴールデングラブ賞を狙いたい。銀次は守備も出来ると証明したい。

 開幕前から、そう言葉にしていた。その上で二塁守備が、一塁守備の上達につながるとも考えた。過去3度(13、14、16年)二塁でゴールデングラブ賞に輝いた藤田を参考にした。一連の動き、ステップ、遊撃手との立ち位置、ベースカバー…。相手チームの二塁手の動きも目に焼き付けた。「少しでもうまくなりたい。純粋にそう思う」と試合前練習では、一塁と二塁のノックに汗を流した。

 今年一塁では112試合に出場し、632回の守備機会で失策は「4」にとどめた。守備率9割9分4厘は昨年の9割9分6厘とほとんど変わらないが、84試合の二塁守備で得たものを「今まで以上にショートバウンドや、ベースカバー、打球への反応や予測がやりやすくなった」と、明確に言える。

 プロ12年目でつかんだ初のゴールデングラブ賞に「しんどかったけど、今となれば二塁もやって本当に良かった。自信にもなります。来年も、取れるように精進したい」とかみしめるように喜んだ。立花社長のあの一声があったから今がある。「打」だけでなく「守」も極める銀次が、18年シーズンも輝く。【栗田尚樹】