巨人の未来の大砲へ「適当論」のススメだ。巨人岡本和真内野手(21)が西武中村剛也内野手(34)と合同自主トレを行った。今季0本塁打に終わった岡本は6度の本塁打王と通算357本塁打を誇る中村から、本塁打量産への心構えを伝授された。「おかわり君」との合体で、才能開花への手応えをつかんだ。

 岡本がおかわり君の柔らかな言葉に包まれた。

 「適当に打てばいい」

 確認から授業は始まった。「どんな選手になりたいの?」「ホームランを打ちたいです」「それなら息の長い、品のある打球を打とう」。先輩を前にしたロングティーはライナー性の打球が外野に弾む。次は中村が実演する。「全球1発を狙えばいい」。打球が高々と上がる。平均滞空時間は岡本の3・5秒に対し、中村は5・8秒。差は歴然だった。

 適当という一見、投げやりな言葉。実は深い。

 中村 片仮名で「テキトー」は雑に感じるが、漢字なら適する当たり。考えることも大切だけど、考えすぎもよくない。だから、適当。インパクトの瞬間は80%で、打った後に100%に。そんな感覚でいい。

 適当が生む2・3秒差。「打球が上がらないと、本塁打にならん。息の長い打球、つまり打球を上げる意識を持つ。ゴロとフライ、どっちがヒットになるか? フライやで」と説き、方法論3つを挙げられた。

 (1)右足に体重を残す 前に突っ込めば、力が伝わらない。理想は左4:右6、極端に1:9の意識でも。構える時点で目線を上げて、タイミングをとる際に右膝をくの字に折る動きを加えると、体重を残しやすくなる。

 (2)骨盤から回る 上半身から回ると開きが早まり、打ちに行く体勢になってしまう。骨盤を意識することで開きを抑え、バットが内側から出やすくなる。

 (3)右手は添える→押し込む 無駄な力を入れずに構える。インパクト時に右手人さし指と親指の間でバットを押し出すことで、スムーズにヘッドが返る。

 岡本の顔が、パッと明るく変化した。かごに入ったボールがなくなるころ、打球の質も変わり始めた。

 岡本 プロに入り、中距離打者なんかなと思うこともありました。でも、やっぱりホームランバッターになるんだと強く思いました。

 去り際、先輩から声を掛けられた。「感覚はそれぞれ。でも、これと思うことは継続した方がいい」。岡本はうなずいた。「自分の形をしっかり見つけ、来年頑張ります」。岡本らしい適当な一打を、中村の頭上に高々と打ち上げる。【久保賢吾、桑原幹久】