巨人内海哲也投手(35)&山口鉄也投手(34)が19日、本音を語り合った。昨季はともに2軍生活が長く、自らの進退をかけ、今季に臨む。尊敬し、信頼し合う2人だからこそ、お互いの核心に迫った。

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 内海と山口鉄が面と向かって座った。合同自主トレは9年目を迎えたが、しらふで語り合うのは久々だった。照れもあるのだろう。鍋の煮立つ音が少しの間響いた。「去年はしんどくて、つらかったな」。話を切り出したのは内海だった。

 山口鉄 寂しい話ですけど、昔の話をしたりしましたよね。

 内海 負け犬の遠ぼえのようにあの頃は良かったとか、話したよな。

 昨季、内海は2勝7敗、山口鉄は18試合で連続60試合登板が9年で止まった。

 山口鉄 張りつめたものが少し抜けたというか。あらためて、厳しい世界だなと思いました。

 内海 今年は一からやし、新人と同じ。でも新人の時とは違って、実績もある怖いもの知らずやから。

 メインの鶏つくねを口に運び、会話も本筋に。村田らベテランがチームを離れ若返りを図る現状に及んだ。

 内海 (昨年引退した)堂上が言ってたよね。『やりたいでやれる世界じゃない』って。今年、ダメならクビなのはわかってる。

 山口鉄 僕も今年、頑張らないと進退にかかわると思ってます。1軍にいる時は引退とか、考えたこともなかったですけど。

 内海 田口、畠も頑張ってるけど、自分はまだ若手には勝てると思ってるし、勝てるだけのものはある。

 山口鉄 今だけを見てやるしかないです。40歳までやりたいとか、おこがましいことは言えないです。

 「覚悟」は自主トレにも表れた。昨年は10人の大所帯だったが、「自分だけのことを考えてやる」ために4人に減った。

 内海 去年までは無理して多めに走った。オレがやらんとついてこないと思って。今年は自分に合った量を順調にできてる。

 山口鉄 近年では一番かもしれないです。肩の違和感もないですし、気持ちが違います。楽しいです。

 内海 俺も今、めっちゃ楽しいんよ。もうひと花、ふた花、咲かせたいと思って、集中できてる。

 2人で囲んだ鶏鍋は締めの麺に入った。過去、現在を語り合った2人の話は、未来へと移り変わった。

 内海 もう、待ったなし。逆境の中、歯を食いしばって頑張れるか。老いと経験、マイナスとプラスがあるわけやから。無印ノーマークから、開幕ローテに入ったらかっこ良くない?

 山口鉄 今年は目標とかは置かないです。1年間1軍にいて、優勝に貢献できたら最高だと思います。

 内海 今年、優勝に貢献できたら泣くかも。ヒサさん(高橋尚成)が巨人最後の年(09年)に優勝して泣いたでしょ。若い時はうれしいだけやから何で? と思ったけど、今ならわかるよね。

 「引退」の2文字を口にし、悲愴(ひそう)感も漂わせたが、巨人で同じ時を刻む「テツ」は笑顔で「テツトーク」を締めた。

 内海 引退をかけてやるシーズンやけど、そんなベテランが10勝したら、確実に優勝できる。2人でシーズン終了後に「復活したな」って乾杯したいね。

 山口鉄 絶対、やりましょう。想像しただけで泣いちゃいそうです。

【取材・構成=久保賢吾】