広島ケムナ・ブラッド・誠投手(22=日本文理大)が21日、大横綱の精神でプロ野球界を生き抜くことを誓った。今月6日の入寮から合同自主トレ、新人選手研修会と慌ただしく過ごし、休養日のこの日は大野練習場に姿を見せなかった。春季キャンプは2軍スタートも、グラブに刻む「不撓(ふとう)不屈」の精神で1軍へのステップアップを目指す。

 2軍スタート決定も、下を向かない。高卒新人が多い中、大学からプロ入りしたドラフト3位ケムナは大横綱の精神を胸に、訪れるチーム内の競争に立ち向かおうとしている。

 「不撓(ふとう)不屈」とは、〈強い意志をもって、どんな苦労や困難にもくじけないさま〉。座右の銘とし、グラブに刺しゅうする。「そういう精神が大事かなと思った。そういう考えでプロにも入ったので、これからも続けていきたい」。元横綱貴乃花が、93年1月の大関昇進時の口上で取り入れた四字熟語として知られる。当時まだ生まれていなかったが、ハワイで生を受け、3歳で日本に移住するとともに相撲好きになった。「テレビでよく見てました。九州場所は特にチェックしてます。遠藤が好きです。何か格好いい」。貴乃花との四字熟語の縁も、最近の相撲界の騒動を機に知った。

 貴乃花は大関昇進の翌94年11月に最高位まで上りつめた。横綱伝達式でも「不撓(ふとう)不屈」の言葉を口にした。同じ言葉を座右の銘とする者として、新人右腕はプロ野球界の横綱を目指す。「今はまだまだですけど、いずれそうなれるように頑張ります」。米国生まれながら和の精神が宿っている。

 大学3年春に肘頭(ちゅうとう)疲労骨折で長期離脱を経験した右腕にとって、2軍スタートは悲観するものではない。当時、寒い時期に調整を急いだことが原因だった。気持ちが前面に出るタイプだけに、初めてのプロのキャンプでもはやる気持ちがケガを誘発する可能性はゼロではない。

 大学時のケガを機にインナーマッスルを強化。体重も6キロ増やし、プロ入りまではい上がった。「先発、中継ぎ、抑えと大学で全部やった。任されたらどこでもいい」。2軍から不屈の精神で1軍にはい上がっていく。【前原淳】