日本ハム栗山監督は「用兵」で強烈なインパクトを与え、チームを前に進める能力に優れている。不動の抑え・増井(現オリックス)の先発転向。開幕投手・斎藤。1番投手・大谷…相手も自軍も、ファンも驚かせる手を過去にも打ってきた。用兵、戦略、戦術という監督の専権事項3項目でも、用兵が極めて大きな比重を占めていることを熟知している。

 オープン戦初戦という今シーズンの節目に、2度しか屋外フリー打撃をしていない清宮を起用する用兵。天候がいい条件付きで「昨日から決めていた。(急性胃腸炎明けで)万全かと言えば、そうではないが」と打ち明けた。5回に6番の横尾から森山、清水と若手に3連発が生まれた。左打ちの強打者で、清宮のライバルとなる森山は9回も本塁打。偶然でも、周囲は「清宮が最高の刺激になっている」と整合性を付ける。

 新任の緒方野手総合コーチは「選手にも優しい監督かな、と思って外から見ていたが、少し違った」と言う。

 緒方コーチ 今日の清宮も、ギリギリまで待って判断した。手を痛めて打てないのであれば「守備だけならどうなんだ」「走るだけなら」と、簡単にあきらめないでギリギリの最善を探り続ける。従来の固定観念にとらわれない、柔軟な考えを持っているが、そこには強い意志を感じる。これから、どんどん出てくると思う。

 突出した個には、組織を突き動かすエネルギーがある。最後に栗山監督は「開幕に向けて、こっちの判断で前に進めている」と言った。3月30日、本拠地での西武戦。清宮を開幕スタメンの名に連ね、強烈なインパクトを起爆剤にシーズンを走ろうと考えているはずだ。【宮下敬至】