清宮の“天敵”DeNAドラフト5位の桜井周斗投手(18=日大三)が、オープン戦開幕戦で高卒新人として28年ぶりの白星を挙げた。24日、2軍から招集され、巨人戦の6回に登板。高2の秋の東京大会で日本ハム清宮から5連続三振を奪ったスライダーと、習得したばかりの2種類のチェンジアップを駆使して1回無安打1奪三振。ラミレス監督に大きなインパクトを与えた。

 18歳の心は1軍のマウンドに立っても落ち着き払っていた。桜井は1人目の吉川尚をスライダーで遊飛。続く田中俊は二ゴロに打ち取ったかに見えたが、失策で出塁を許した。走者ありの状況で迎えた山本への初球は忍ばせていた変化球のチェンジアップ。最速146キロの直球を織り交ぜながら4球で一ゴロに仕留めた。さらに和田は空振り三振。打者4人に計17球。「準備をしっかりできていた結果だと思う」と抜てきに無安打で応えた。

 スライダーを武器に2軍で頭角を現していた。その切れ味は、ラミレス監督が「えぐい」と称賛したほど。一方で「変化球1つだけではプロで対応される」という心配をよそに、チェンジアップを習得。昨秋ドラフト後、まずはドラフト1位の東に教わった。年明けの新人合同自主トレでは、チェンジアップを武器に侍ジャパン入りした浜口に聞いた。「浜口さんのは緩急がついて、東さんのは球速がある。ベストは2つを使い分けること」。握りも変化も違う2種類を並行して練習し、わずか1カ月半で引き出しが2つ増えた。

 吸収できるものは何でも吸収しようという貪欲さがある。緊張するはずの登板前には、先発で投げ合う熊原と巨人中川をじっくり見た。「中川さんは落ち着いて投げていて、熊原さんは投げっぷりがよかった。見ていて僕もそうしようと」。実際に投げっぷりよく、かつ冷静に投げた。

 高校でしのぎを削った清宮と偶然にも同日デビュー。「彼は1軍キャンプでやっている。僕は僕のペースで成長できれば。いい目標であり、いいモチベーションでもあります」。高校卒業間近の18歳。1カ月半で急激な成長曲線を描いた。【栗田成芳】

 ◆高卒ルーキーの桜井がチーム開幕戦で勝利投手。オープン戦で高卒ルーキーの初登板初勝利は00年3月19日河内(広島)以来だが、チームの開幕戦で白星を挙げたのは90年3月4日宮地(西武)が広島戦で記録して以来、28年ぶり。なお、DeNAの高卒新人がオープン戦で勝利を記録するのは、大洋時代の89年3月25日石井以来のこと。

<桜井周斗(さくらいしゅうと)アラカルト>

 ◆生まれ 1999年6月25日、埼玉生まれ。

 ◆サイズ 178センチ、80キロ、左投げ左打ち。

 ◆経歴 日大三で甲子園出場。17年ドラフト5位でDeNA入団。

 ◆寸評 高校2年の秋季大会で早実・清宮から5三振を奪い、一躍その名をとどろかせた。2種類のスライダーはすでにプロレベル。打撃センスも高く、U18W杯では5番を担った。プロでは投手に専念しつつ、打席に立てば打つ気は満々。球種を増やしスタミナをつければ将来のエース候補。