阪神の中堅争いに強烈なアピール弾!! プロ6年目の緒方凌介外野手(27)が3日、ソフトバンクとのオープン戦(ヤフオクドーム)で9回に代打出場し、昨季、日本新記録の54セーブを挙げた絶対的守護神サファテから豪快アーチをバックスクリーンにかっ飛ばした。金本監督も「開幕で菅野…。緒方ちゃうか」と高評価。2月のキャンプは安芸2軍スタートだったが、3月30日の巨人戦(東京ドーム)で開幕投手を務める菅野攻略の刺客に急浮上だ。

 2万4523人の観衆が息をのんだ。誰もが驚く弾道がグングン伸び、そのままバックスクリーンに。打席で強振したのは昨季、1軍昇格できなかった緒方だ。マウンドで立ち尽くすのは、日本プロ野球新記録の54セーブを挙げ、シーズン&日本シリーズのMVPに輝いた、あの豪腕サファテだ。2ボールからの3球目。外角低めの直球を完璧にはじき返した。

 2月は安芸2軍キャンプスタートで、この日が今季1軍初実戦だ。代打で痛快な「大物食い」に成功。しかも、チームのオープン戦1号だ。この日、貧打に首をかしげていた金本監督も「最後にレフトスタンドが唯一沸いた」と笑わせ「かなり2軍でも振り込ませてくれているし、2軍のスタッフがね。彼自身、ちゃんと下で腐らず上を向いて、1軍に絶対上がるという気持ちで振ってきた証拠でしょう」と声を上ずらせた。

 指揮官が描く「勢力図」も一変した。外野の1軍枠にとどまらず、中堅争いに緒方の名前も色濃く刻まれた。「今日のを見たらねえ…。いまおる外野手で開幕で菅野…。緒方ちゃうか」。半信半疑の周囲を制するように、大まじめに言う。「いや、冗談抜きで。あるよ。ないこともないよ」。すでに3月30日の開幕戦は巨人菅野の開幕投手が決定。中堅争いを繰り広げる中谷、高山、俊介、島田は現時点で決め手に欠く。緒方は対戦経験こそないが左打ちの利点もあり、開幕スタメン候補に急浮上した。

 14年に放った通算2本塁打にとどまるが数少ないチャンスを生かした。緒方は「最高の結果が出た。自分は他の選手より厳しい立場。1打席1打席結果を残さないと生き残っていけない」と話す。安芸で打撃動作を試行錯誤するなか、浜中2軍打撃コーチの言葉がヒントになった。14年6月15日西武戦で放った中堅への本塁打の映像を見ているときだ。「右足を内に入れていた。いまは内に入っていないからタイミングが合わない。戻してみたら?」。右足の上げ方を変えると間合いを計れるようになった。

 執念は消えていない。丸2年前の3月3日は、死球にもん絶。金本監督に「骨か、肉か」と問われ、激痛に耐えてプレーを続行して激走で三塁を陥れた。同じ博多で、強烈な勝負根性を見せた。【酒井俊作】