宝刀の真骨頂を見せた。巨人上原浩治投手(42=カブス)が、楽天とのオープン戦に8回から登板し、1回を2安打無失点に抑えた。粘り強い日本の打者へ不利なカウントからもスプリットを有効に使い、一線級で戦い続ける術を披露した。次回は最後のオープン戦となる明日25日の楽天戦に登板予定。10年ぶりの日本復帰後2戦目も熟練の投球で、開幕へまた1歩前へ進んだ。

 3球に術が凝縮されていた。上原が最初に向かう敵は嶋。カウント1-1から125キロのスプリットが内角低めへわずかに外れる。4球目、同じくスプリットを肩の高さからストライクゾーンへ落とした。「2ボール、3ボールからスプリットを狙ってくる打者はあまりいないと思うので、カウントをとれる球を投げた」。追い込んでから打者の打ち気を誘うように、三たび宝刀を前球の低さからボール1個分、沈めた。本来のスイングをさせず、遊ゴロ。ともに困難をくぐり抜けてきた相棒を連投し、封じた。

 最高のイメージとは、まだ距離がある。2死から茂木、田中に連打を浴びた。いずれも追い込んでからのスプリットを、しぶとく返された。「日本の打者は空振りをしてこない。いやらしいですよね」。バットを豪快に振り回すメジャーのバッターとはかけ離れた、日本特有の粘りを体感。「もうちょっと追い込んでからのスプリットの精度、空振りがとれるキレがほしい」と10年間の日米のブランクを再確認し、進むべき方向性を明確にした。

 直球の輝きは取り戻しつつある。この日の最速は139キロ。8球中4球でファウルを奪い、打者を宝刀に集中させなかった。前回はスピードガンが不調で最速は133キロ、球団計測では138キロだった。高橋監督も「今日はスピードガンがちゃんとしてたね」と笑みをこぼした。

 上向きな状態にジョークも弾んだ。この日は菅野、則本が先発。両リーグを代表するエースの投げ合いに上原は「課題が出たのは2人のせい。素晴らしいピッチングに見とれてしまったんで、少し調整が遅れてしまいましたね」とオチもつけたが、菅野もベンチで上原を前のめりに凝視した。注目を集める42歳が熟練の技を磨き続ける。【桑原幹久】