西武がド派手な逆転サヨナラ勝ちを飾った。8点差を追う8回に一挙7点を奪い押せ押せムードに乗ると、9回無死満塁から森友哉捕手(22)が前進守備の右中間を破る決勝二塁打で終止符を打った。8、9回の2イニングで8点差をひっくり返しての勝利はプロ野球史上初。奇跡を呼ぶ全員野球の猛攻で、獅子打線の力を見せつけた。

 高々とヘルメットを放り投げた。1点差に追い上げて迎えた9回無死満塁。森は149キロ直球をしばき上げた。前進守備の右中間を破るサヨナラ2点二塁打。大逆転劇を締めくくったヒーローは、ウオーターシャワーでびしょぬれになりながら「外野が前進していたので、かち上げようと思った。チームの皆さんがチャンスを作ってくれたので、思い切っていくことだけ考えました」と満面の笑みを見せた。

 大量失点にもあきらめず、劇勝への下地を作った。8点ビハインドの8回。連続押し出し四球で2点を返すと、続く外崎が「点差関係なく、チャンスだったので打ってやる」と三塁線を破る2点二塁打。さらに栗山が「チームのいい流れにのって打てた」という連続適時打で続いた。イケイケの怒濤(どとう)の反撃で一挙7得点。敗色濃厚な流れを激変させた。

 森も「ベンチはいつも以上に盛り上がっていて、絶対逆転できる雰囲気があった。後押しされました」と感謝した。全員が逆転を信じ、状況に応じた仕事を全うしたからこその勝利。9回無死一塁では、浅村が「併殺だけは避けよう」と初球に自己判断でセーフティーバントの構えを見せた。進塁打狙いの右前打で好機を広げ、4番山川も打てる球だけを待ち、四球を選んで森の一打につなげた。

 開幕戦前、辻監督がナインに伝えた心得が、つながりの土台になっている。

 辻監督 たとえ大差がついても1打席1打席を大事にしてほしい。その1打席がなければ、得点はできない。長いシーズン、その姿勢が必ず結果に生きてくる。

 終盤3イニングでの総得点数は39。全89得点の4割以上を占める数字にも、その言葉を遂行する姿が表れる。

 全員野球でつかんだプロ野球史上初の大逆転。指揮官も「すごい試合を見せていただきました。誰がヒーローか分からないほど、全員でつないでくれた。最後は(森)友哉がおいしいところを持っていったということでいいでしょう」とたたえた。獅子の底力を見せつけた1勝。この勢いで10年ぶりのVへ、突き進む。【佐竹実】