先人を超え、名を刻んだ。巨人坂本勇人内野手(29)が1回に左翼線へ二塁打を放ち、史上70人目の通算300二塁打を達成した。29歳4カ月11日での到達は榎本喜八氏(東京)より3日早い“史上最年少”の記録。前日24日には衣笠祥雄氏の訃報に接し、連続出場記録を作った偉大な先輩との別れを惜しんだ。5回には1号3ランを放ち、63年ぶりとなる今季最多20得点の大勝をけん引。記録ずくめの5連勝で勝率を5割に戻し、首位広島を追う。

 偉大な記録をほんの少しだけ上回ると、坂本勇は二塁上で照れくさそうに頭を下げた。1回無死。中日大野雄の141キロ直球をはじき返した。打球は左翼線付近で力強く弾む。そのまま人工芝の上を転がると、フェンスに到達。打球の行く末を見ながら悠々と二塁へと到達すると、バックスクリーンには通算300二塁打達成の文字が浮かんだ。「もっと打てるように頑張ります」と史上70人目の記録を喜んだ。

 “史上最年少”の記録達成だ。29歳4カ月での到達は66年の榎本氏に並ぶ。この日の時点で坂本勇は29歳4カ月11日。榎本は29歳4カ月14日で達成しており、3日だけ早く大台に乗った。プロ入りから大きな故障も少なく、順調にたどり着いた数字。球史の1ページを刻み「トレーナーやケアしてくれる人たちのおかげ」と感謝した。

 レジェンドの遺志を刻む。前日24日に衣笠祥雄氏の訃報に接した。19日のDeNA戦ではテレビ解説の中で同氏から、坂本勇の右足に体重を乗せる打撃を称賛された。「こういう打ち方をするバッターが少なくなりました」とかすれ声に熱がこもった。球場で会う度に声をかけられた偉大な先輩。伝え聞き「そうですか」と言葉をかみしめた。連続出場記録のすごみは身に染みて分かる。「内野手であれだけ出続けたのは僕では考えられない次元。精神力が強くないと。体だけじゃ無理な記録。すごく尊敬しています」と鉄人の魂を胸にしまう。

 5回には「自分も早く打ちたいと思っていた」と待望の今季1号3ランを放ち、20得点の快勝に導いた。63年ぶりの記録と聞くと「すごいことですね」と驚きながら、「投打ともに良い流れで来ている」と5連勝に手応えを口にする。自らが輝き、チームを勝たせる。先人に肩を並べ、歴史を紡いでいく。【島根純】