走る3番打者がフル回転した。ロッテ中村奨吾内野手(25)が3安打3盗塁をマークし、両リーグ最速で10盗塁に到達。3回には敵失の間に一塁から一気に生還して決勝のホームを踏んだ。試合はエース涌井秀章投手(31)がリーグ一番乗りとなる今季初完封で2勝目。1-0の接戦を制して楽天に2連勝した。

 中村は迷わず二塁からスタートを切った。1回2死。4番井上の打席の5球目で、三盗に成功した。不意を突かれた楽天バッテリーは、ノーマーク。1球前に二盗したばかりだ。2球連続、辛島のチェンジアップの間に次の塁を陥れた。「映像で見てて、いけるなと思ってトライしました。チームで、どんどん走ろうと徹底している」。初回と同じく中前打で出塁した8回にも二盗し、両リーグ最速で2ケタ盗塁に到達した。

 走塁改革を掲げる井口ロッテの象徴的存在だ。昨季11盗塁だったのが、開幕1カ月で早くも10個。変わったのは「スタートとスライディングの意識です。それが一番アウト、セーフに直結する」。速く、強く塁に滑り込む。そして挑戦ゆえの失敗は責めないというチーム方針が、積極性を加速させる。基本は、行けたら行けのグリーンライトだ。

 好敵手の存在はさらに大きい。「リーグトップはうれしいことなんですけど、それよりも荻野さんと競いたいです」。通算160盗塁、この日の5回に二盗を失敗するまで、今季盗塁成功率100%だった足のスペシャリストが向上心を刺激する。チーム内の最多盗塁者には、スポンサーからオーストラリア往復航空券が贈られる“ご褒美”もある。2人でリーグ盗塁王のタイトルを争うことになるかもしれない。

 開幕から不動の3番として打率も3割台をキープ。出塁できるからこそ走れる。3回には楽天オコエの適時失策で一塁から一気に生還、足で決勝点をもたらした。チーム盗塁数30も12球団断トツで目標のシーズン140盗塁まで順調だ。井口監督は「足でかき回したおかげで、あんまり打ててないイメージがないくらい、しっかり得点圏に進めている」。走るロッテに中村あり、だ。【鎌田良美】