中日松坂大輔投手(37)が日本球界12年ぶりの白星をつかんだ。

 粘って6回1失点。3-1のスコアで救援陣につなぎ、逃げ切った。3安打、7四球、1死球、6奪三振、114球の内容だった。中日移籍後では最速の147キロもマークした。

 初めてのお立ち台では笑顔だった。「チームが苦しいときにこれだけたくさんの人に来ていただいて、久しぶりの勝利を味わえて、本当に最高です。相手も強いし、僕としてはとにかく自分で連敗を止めてやろうと、初回から飛ばしました」。自身3度目の先発で、中日の連敗を4で止める大きな役割を果たした。

 日本での白星は西武時代の06年9月19日ソフトバンク戦(現メットライフ)以来、4241日ぶり。メジャーではメッツに所属した14年6月10日のブリュワーズ戦で勝ったのが最後で、自身4年ぶりの勝利になった。15年から昨年まで3年間所属したソフトバンクでは1試合だけの登板に終わり、勝てなかった。

 初回に3点の援護をもらい、初めて登板時にリードした状態で試合が進んだ。初回いきなり先頭の神里を四球で出したが、大野奨が二盗を刺したのが大きかった。注目された横浜高の後輩筒香との最初の対戦はチェンジアップを打たせて左翼への凡飛。打者3人で初回を終えた。

 2回は1死一、二塁のピンチを招いたが下位打線を抑えた。3回も2死から2四死球を出したが、ロペスを左飛に抑えた。4回は先頭宮崎に右前打を浴びながら、梶谷、宮本、飯塚を3連続で空振り三振にしとめた。

 5回が最大の難所だった。1死一、二塁から筒香に四球を与えて満塁。ロペスを迎えたところで場内の中日ファンが拍手で激励した。大声援に応えるように三ゴロで本塁封殺。続く宮崎には押し出し四球でこの日初の失点をしたが、梶谷はチェンジアップを打たせて一ゴロ。ちょうど100球目だった。ベースカバーに走った一塁ベース付近でグラブを口元にかぶせて、咆(ほ)えた。

 5回を終えた時点で森監督から「もういいだろ」と打診されたが続投を訴えたという。「まだ投げたい気持ちがあった。投げることしか考えていなかった。ピンチの場面での皆さんの応援が、最後に僕に力を与えてくれた。ありがとうございます」

 最後の6回は2死一、二塁とされ、大和に右翼やや後方への飛球を打たせた。平凡な飛球と思われたが右翼で初先発のモヤがふらつきながら捕球すると、松坂は天井をしばらく見上げて、満面の笑みでベンチに下がった。移籍後初めて勝ち投手の権利を持って降板した。

 「チームも僕もまだまだですが、今日をきっかけにもっともっと上がっていけるように頑張ります。小さい子たちは僕が誰か分からないと思う。こうやってヒーローインタビューを多く受けて、小さい子たちに顔を覚えてもらえるよう頑張ります」

 5日の巨人戦(ナゴヤドーム)は5回3失点、19日の阪神戦(同)は7回2失点の力投。3度目の先発も、しっかり試合を作った。ソフトバンク時代は右肩の不調などで登板1試合だけに終わり、引退危機に陥った。だが昨年から右肩の調子を上げ、復活を目指して中日と入団テストを経て契約。初めてのセ・リーグで「平成の怪物」がついに復活の白星にたどり着いた。