今季のプロ野球は、監督がリプレー検証を要求できる「リクエスト」や投球しなくても敬遠できる「申告敬遠」が始まった。日刊スポーツ調べでは7日現在、リクエストの総数が80回で判定変更が29回の36%。申告敬遠は54回あった。開幕から約1カ月が経過し、試合に与える影響などを検証した。

 リクエストに積極的な姿勢で臨んでいるのは、12球団最多10度のロッテ井口監督と、8度の日本ハム栗山監督だ。開幕戦の1回表、12球団で初めて成功させた井口監督は「流れを変えたり、間を取ったり、いろんな意味で使える。2度、使える権利があるわけですから、明らかに(アウト、セーフが)分かってても使っていいと思う」。ロッテの判定変更率は50%と高く、4月20日の西武戦では1試合で2度成功している。

 栗山監督も戦術の一部として活用している。「もしかしたらと思ったら、行くから。行っておけば、変わってプラスになることがある。それ(リクエスト)をやらないことが一番、流れが変わる。これだけは許されない」。選手のモチベーションを下げぬためなら失敗も覚悟の上のようで、判定変更は8回中1度で変更率はわずか13%。4月26日オリックス戦では1試合2度の失敗で、12球団で初めて権利消滅した。リクエストを行使した試合では4勝3敗と勝ち越している。

 リクエスト巧者は、オリックス福良監督だ。7度のうち5度成功と成功率が71%と高い。5月5日ソフトバンク戦では松田の打球に対し、本塁打判定を覆す初のケースを演出した。ただし、リクエストを要求した試合は5戦5敗だ。「出せる時に出すだけ」という中日森監督も成功率63%と高く、行使した試合は6勝2敗と高勝率を挙げている。

 リクエストが最も少ないのは西武辻監督の3度だ。大量得点差の試合が多い影響かと思いきや「判定が違うと思ったら行っているだけ。2回権利があるからと、むやみに行くのは趣旨が違う。点差も関係ない」。「趣旨」とは開幕前の12球団監督会議で口頭で確認している「紳士協定」のことを指し、順守する姿勢を明確にしている。

 4月29日楽天戦では源田がアウトから三塁打に変更になった。翌30日に3試合連続三塁打とパ・リーグタイ記録につながったが「三塁打になるかも、という結果も関係ない。一塁の判定の時はアウトか、セーフかで、選手の記録のこともあるけどね。それでも、違うと思ったら行くだけ。やみくもにいこうとは思わない」とぶれない。

 大リーグの「チャレンジ」と違い、ベンチ裏でビデオを見てからのリクエスト要求は認めない。選手との連係が大切だ。ヤクルト小川監督は「判断するのに時間をかけられない。選手の表情やしぐさを見るのは大事」と難しさを語った。

 ソフトバンク工藤監督は4月22日日本ハム戦で内野ゴロのセーフ判定に要求しなかった。「コーチが立っていて見えなかった。出るのにちゅうちょしてしまった。少し出遅れた」。ベンチ裏ではプレー後にモニターを見た関係者のぼやきもあったようだが、プレーは続行。ルールを順守している証左となった。【プロ野球取材班】

 ◆リクエスト 監督がリプレー検証を審判に要求できる制度。9回までに2度行使でき、判定が覆ると回数は減らない。9回終了で回数はリセットされ1度追加される。行使する場合は判定後速やかに監督はベンチ前で球審にモニターを意味する「四角」を形づくる。スタッフなどがリプレー映像を確認し、監督に行使を促す行為は禁止。検証結果に異議を唱えると退場となる。審判は審判室モニターのテレビ中継映像を使用し、責任審判と他1~2人が5分以内に検証する。リクエストできないプレーは投球判定、ハーフスイング、自打球、走塁妨害、守備妨害、インフィールドフライ、審判より前方の打球、ボークの8種類で、審判の判断が入る判定は対象外。