巨人山口俊投手(30)が首位広島の前に仁王立ちした。1日の対戦で会沢に連続死球で乱闘騒ぎになるなど、自身3連敗を喫する要因となった因縁の相手を力でねじ伏せた。133球の力投で9回2安打に抑え、約1カ月ぶりの勝利を移籍初完封で飾り、チームの広島戦連敗を4で止めた。リーグトップの4完投をすべて地方球場でマークする「地方巡業の鬼」の働きで広島とのゲーム差を3・5に縮めた。

 闘技場のど真ん中を力勝負で勝ち抜いた。4点リードの4回1死満塁。山口俊は広島野間を迎え、捕手小林のサインに3度首を振った。フルカウントからの11球目は146キロの外角高め直球。ボールゾーンにもかかわらず、振らせた。「力で行きたかった。それだけです」とねじ伏せた。続くバティスタは134キロのフォークで連続三振。「4回のピンチを乗り切って、完封を頭に入れてました」と勝利の確信が生まれた。

 KO負けを喫した相手にひるまなかった。1日、敵地での広島戦。会沢への2打席連続死球で両軍がベンチを飛び出した。一触即発の空気の中、9安打8四死球6失点とボコボコに打ち込まれた。そこから自身3連敗。乱調の原因となった因縁の試合だった。広島を倒さなければ復調はない。「現時点でチームは負け越しているし、上を直接たたくことが絶対必要になってくる」と、たたきのめす闘志を心に抱き続けた。

 だからこそ、攻める意識を強く持ち続けた。日々の試合前練習では外野でブルペン捕手に投球。スタッフに打者となってもらい、内角めがけて思い切り腕を振った。「内角は100%ボールと打者に思われて、捨てられてはスライダーやフォークが生きない。だから攻め続けないといけない」。伝家の宝刀をより効果的にするため、小手先の技術ではなく、投げきる勇気を磨いた。

 最後まで立ち続ける覚悟があった。8回終了時に「行きたいです」と斎藤投手総合コーチに続投を直訴。最後は11個目の三振で締め、地方球場4連続完投を果たした。お立ち台で地方に強いと問われると「ちゃんとした球場でも、しっかり頑張ります」と笑いを誘った。古代ローマのコロッセオをモチーフにした宇都宮・清原球場で、因縁の会沢も2打数無安打1四球と抑えた。赤ヘル軍団をなぎ倒す133球、堂々の完封勝利だった。【島根純】