阪神に新星が誕生した。2年目の才木浩人投手(19)が巨人戦で6回2安打無失点と好投し、プロ初勝利を挙げた。「強気」を誓ったマウンドで、最速152キロを計測した直球を武器にグイグイ攻め、7奪三振の快投だった。阪神の10代投手として史上初めて巨人戦でプロ初勝利を記録した右腕の活躍でチームは今季初の5連勝。ナイターでDeNAが敗れ、2位に浮上した。勢いを加速させ29日開幕の「日本生命セ・パ交流戦」に突入する。

 才木が心意気をいきなり示した。初回、1番坂本勇に7球連続で直球勝負。「真っすぐで押して、押して。インコースも使いながら決め球も腕を振って投げて。特別難しいことはせず、真っすぐを投げていこうと」。最速152キロを計測するほどアクセルを踏み込んだ。9球目に二塁打を浴びたが、直後にけん制で刺して流れを取り戻した。「ちょっとラッキーな感じはありましたね」。運も味方に快投の幕を開けた。

 「受け身より、攻めていくという感じでずっといこうと思って。実際、そんな感じで投げられた」。189センチ、80キロの体から伸びのある直球で巨人打線を押し込み続けた。カーブ、フォークと変化球も生きた。6回を被安打2で無失点。伝統の一戦で初勝利を挙げ、「最高です。野手の方々が先制点を取ってくれて楽に投げることができた」と喜んだ。

 1年目は1軍の2試合に登板し2回2/3を投げた19歳。オフの日も頭の中は野球でいっぱいだ。「朝起きて、録画していたドラマを見て、昼ご飯を食べて。お風呂に入る前のストレッチでも、マウンドに上がったときのことを考えてしまう」と心配は尽きない。そんな右腕を支えたのはグラブに刻む「強気」の文字。「自分のボールが通用するのか、まだ分からない。マウンドでもチラッと見て気持ちを入れられるようにです」。信条を大観衆の甲子園で体現した。

 兵庫・須磨翔風高の入学時、直球の最速は120キロに満たなかった。同学年の中でも4番手投手の位置づけだった。無理もない。中学2年の秋まで捕手で、本格的に投手に取り組んだのは高校入学から。毎日タイヤを押すなどして力をつけた。1年目の昨季も重点は体力強化だった。2年目、12安打を浴びて初黒星を喫した20日中日戦のプロ初先発からしっかり修正し、2度目の先発で輝いた。

 金本監督は「投手コーチが『もう1回、チャンスを』と。見事、期待に応えてくれました」。3年目の金本政権で初の巨人戦3連戦3連勝。立役者は「エースと呼ばれるような投手になれるように頑張る」と意気込んだ。【真柴健】

 ▼2年目の才木が6回を0点に抑えプロ初勝利を挙げた。巨人戦でプロ初勝利を記録した阪神投手は03年6月15日久保田以来、15年ぶり。久保田はリリーフ勝利で、プロ初勝利が巨人戦の先発勝利は87年8月11日猪俣以来、チーム31年ぶりになる。才木はまだ19歳で、巨人戦でプロ初勝利を記録した阪神の10代投手は初めてだ。