巨人菅野智之投手(28)が、今季初の無四球完封で7勝目を挙げた。序盤から150キロ台の直球で押し込む強気の投球で被安打6にまとめ、交流戦絶好調のロッテに最後まで本塁を踏ませなかった。前回の登板で西武菊池に投げ負けた右腕が、今季3度目のシャットアウトで、ロッテからは自身初勝利。1週間でエースの貫禄を取り戻し、チームを2位に浮上させた。

 疲労感もどこ吹く風だった。最終回に向かう前のベンチ。8回まで116球の菅野は斎藤投手総合コーチから続投の意思を問われ、迷いなく首を縦に振った。「もちろん行くつもりでした。議論の余地はなかったですね」。9回、中村に2死から安打を許すも、無失点のまま任務を終え、小さく拳を握った。

 序盤からフルスロットルだった。3回まで39球中20球が直球系。うち17球で150キロを超え、今季最速タイの154キロも計測。絶好調だった。4回に無死一、三塁とされたが、表情をぴくりとも変えず、中村、角中、清田のクリーンアップを抑えた。ストライク先行で、逃げも隠れもしない。堂々たる投球で最後まで駆け抜けた。

 自分なりのエース像を探し続けている。昨季は防御率1・59の安定感で17勝を挙げ、自身初の沢村賞を受賞した。名実ともに球界を代表するエースに上り詰めたが、理想のエースとは? との問いに「正直まだ分からないんです」。しばらく考えてから絞り出した言葉は端的だった。「勝つ投手…ですかね」。調子うんぬんではなく、シンプルにチームを勝たせる。それだけが目指す道だと信じる。

 周囲からは常に特別視される。前回登板の8日西武戦で菊池と投げ合い、5回5失点でKO負け。屈辱から1週間。ロッテ涌井に勝利し「またエースに負けたと言われてしまうのでね。涌井さんは素晴らしい投手ですし、僕なんかより実績が上の投手に勝てて良かった」と再び立ち上がった。

 エースだからこそ、敵を選ぶことはできない。過去3戦3敗と苦手にしていたロッテを沈め、11球団から白星を奪った。「オールスターまでに6完投にしておけば後半であと4つ。シーズン当初からの10完投という目標があるので、計画的に進めたい」。エースの歩む道は、誰も阻めない。【桑原幹久】

 ▼菅野が今季3度目の完封でロッテ戦初勝利。過去3戦3敗のロッテ戦で白星を挙げ、これで対戦した11球団すべてから勝利を記録した。完封は通算11度目となったが、過去10度はセ・リーグ相手で、交流戦の完封勝ちはプロ入り初。この日は無四死球で、無四死球試合は今季3度目、通算では10度目。無四死球試合も交流戦では初めてだ。巨人で完封勝ちと無四死球試合の両方を10度以上記録したのは、桑田(21完封、13無四死球)以来になる。