西武が得意の「土壇場力」を発揮して2位日本ハムに逆転勝ち、ゲーム差を再び5・5に広げた。2点を追う8回1死満塁、打者炭谷の場面で代打の切り札・栗山を投入。捕手をベンチに下げてでも勝負する気迫を前面に出し、金子侑の逆転適時三塁打につなげた。終盤の逆転は今季の象徴。10年ぶりのリーグ優勝へひた走る。

 金子侑の打球は左翼手の頭を越えた。5-6の8回2死二、三塁、日本ハム・トンキンから逆転の2点適時三塁打。「食らいつこう」と執念を実らせ、三塁で激しくガッツポーズした。

 逆転劇を生んだのは全員の執念だ。2点を追う8回、1死から森が中前打。外崎は「後ろの中村さんが調子いい」と回すことだけ考え、四球を選んだ。中村も「何とか四球でもつなごう」と7球粘って選んだ。塁が埋まり、辻監督は勝負に出た。「総力戦というか。栗山しかいない」と捕手炭谷に代打。スタメンマスクの岡田には既に6回に代打を送っていた。9回は森のDHを解除し、捕手に就かせるしかない。万一、森にアクシデントが起きても代わりの捕手はいない。それでも、迷いはなかった。

 指揮官の執念は栗山の打球に乗り移った。強烈なライナー。三塁レアードに横っ跳びでグラブに当てられたが、結果、三ゴロの間に1点を返した。二、三塁となり、外野が前に出たことで、金子侑の打球が頭上を越える逆転打となった。

 執念の連鎖だ。森の安打から外崎、中村がつないだから、辻監督が勝負手を打った。勝負手を打ったから、栗山が強烈なライナーを放った。それで1点差に詰めたから、敵の外野は前に出た。外野が前に出たから、金子侑の打球が逆転打になった。連敗なら、日本ハムと6日以来の3・5ゲーム差だった。辻監督は開口一番「選手に感謝します」と興奮気味。「(勝負どころは)まだまだ先だが、優勝を目指している。今日の勝ちは大きい」。みんなの思いが実った。【古川真弥】