1点リードの5回2死二塁。ブルペンから巨人上原が飛び出した。「行けと言われたところで行くだけ」。対するは今季対戦成績3打数2安打のヤクルト山田哲。「今年打たれているので、嫌だなと思った」と悪夢もよぎったが、一瞬で振り払った。1ボールからスプリット、直球で追い込むと、最後は宝刀スプリットで空振り三振。「うまく落ちてくれた。(小林)誠司のリードもよかった」。心からあふれる喜びを包み隠さず出した。

これだけでは終わらない。ベンチへ戻ると、斎藤投手総合コーチから今季初の回またぎ指令が出た。「頭にはなかった。それでもあれこれ考えても疲れるだけ。気持ちを切ることなくいけた」と43歳の大ベテランらしく受け止めた。3番バレンティンを捕邪飛、4番雄平、5番大引を連続三振。1回1/3を無失点。任務を完璧に遂行した。

メジャー9年間で計4度のポストシーズンを戦い抜いてきた。19試合で1勝1敗7セーブと無類の勝負強さを発揮してきた。「短期決戦は何が起こるか分からない。内容はどうこうじゃない。勝つことだけが大事」。13年にはレッドソックスでワールドシリーズの胴上げ投手に。「言葉では言い表せない。もう、あれ以上の経験はないと思う」。一生の財産が、日本で初の5回からの救援登板も好結果へと導いた。

日本球界では10年ぶりの白星もついたが「こういう時は誰についたとかじゃなく、チームが勝つことが大事」と意に介さない。今日14日は自身も背負った「19」をつけるエース菅野が先発。ヒーローインタビューで「明日は1人で投げきってください!」と後輩への“アメリカン・ジョーク”も飛んだ。米国帰りのレジェンド右腕がビッグウエーブを生み出した。【桑原幹久】