虎の第34代監督が誕生した。阪神矢野燿大2軍監督(49)が15日、要請されていた次期監督就任を受諾した。兵庫・西宮市内の球団事務所で揚塩健治球団社長(58)と会談し、伝えた。チームは今季17年ぶりの最下位に沈み、金本知憲監督(50)が辞任。苦境からの船出となるが、縦じまを愛するがゆえのチャレンジ精神で受諾した。近日中に就任会見が行われる。

終始厳しいままの表情が苦難の船出を物語っていた。矢野2軍監督は揚塩球団社長との会談後、次期監督就任要請の受諾を表明した。「いろいろ考える時間をいただきましたけど、タイガースの監督をやらせてもらうことになりました」。最後は今季2軍で徹底した「超積極的」で「諦めない」チャレンジャー精神が背中を押した。

「本当に悩んだんですけど、逃げてやらない後悔よりも、やってみるべきだなと思いました」

いばらの道にあえて足を踏み入れる。金本監督の辞任が表明されたのは11日。その2日後、フェニックスリーグ開催地の宮崎で監督就任を要請された。金本阪神誕生から2年間は1軍コーチを務め、今季はファームを日本一に導いた。来季は1軍ヘッドコーチを任される予定だった。内定していたプランが白紙に戻った危機的状況で、縦じまへの責任感から受諾した。

揚塩球団社長は就任要請の決め手を「金本路線を引き継げるのは矢野監督だと思います」と説明。今年2月に2軍の安芸キャンプを訪問した際、矢野2軍監督が掲げた3カ条、<1>超積極的<2>諦めない<3>誰かを喜ばせる、に深く共感したという。

新監督として育成と勝利の両立を期待されるが、決して楽観できない。

「今年の金本監督の大変な姿も見ていた。このタイミングで、というのはすごく悩む材料になりました。タイガースの監督は責任も重いですし、悩みました」

今季は17年ぶりの最下位に沈んだ。中谷、高山ら伸び悩む若手の再生も重要な課題だ。苦境からの再スタートだというのに組閣や補強戦略に時間をかける余裕もない。それでも苦悩の末、虎を救うため立ち上がった。その覚悟にタイガースの未来が託される。【佐井陽介】

◆矢野燿大(やの・あきひろ)1968年(昭43)12月6日、大阪府生まれ。桜宮-東北福祉大を経て90年ドラフト2位で中日入団。97年オフにトレードで阪神移籍。正捕手として2度のリーグVに貢献。10年引退。通算1669試合、打率2割7分4厘、112本塁打、570打点。ベストナイン3度、ゴールデングラブ賞2度。16年に1軍作戦兼バッテリーコーチで阪神復帰。今年は2軍監督を務め、ウエスタン・リーグV、ファーム日本一。右投げ右打ち。