阪神藤原次期オーナーは会見の席上で「現場主導」といったフレーズを繰り返したが、現場に丸投げでは、ろくなチームはできないだろう。

今回、球団は金本監督の続投を明言しておきながら一転、解任も同然の辞任に追い込んだ。水面下で本社が主導して続投方針が撤回され、矢野2軍監督の昇格にかじが切られたのだ。

そもそも昨オフ、球団は2軍の掛布監督から矢野監督へのバトンタッチを「世代交代」と説明。それが1年でほごになっては、方針がぶれたと言われても仕方がない。

藤原次期オーナーは、矢野監督にチーム戦略の方向性を託すことを示唆した。しかし、チームは、現場任せでなく、「フロント主導」でなければ、常勝チームなど絵空事になりかねない。

去り際の金本監督は「(阪神は)だいぶ育成も終わったので、そろそろ補強で勝たれたほうがよろしいと思います」と語った。それは急展開の辞任勧告に対する、精いっぱいの皮肉とも受けとれた。

一連の騒動で、阪神が一体感を欠いていることが表面化した。藤原次期オーナーは「ファン、関係者には随分ご心配をかけた」と語った。今後は、「本社-フロント-現場」が三位一体になれるか否かだろう。

いうまでもないが、オーナーとは、フロントの最高責任者である。確固たるビジョンを示し、その方向性を現場に託すのが、チーム作りの根本。そこを明確にしないと、ゼロどころか、マイナスからの船出になりかねない。【編集委員・寺尾博和】