5年のブランクを経て、現役に挑戦した。13日にタマホームスタジアム筑後で行われた12球団合同トライアウトを、今季は中日の1軍マネジャーを務めていた関啓扶投手(25)が受験した。

カウント1-1からのシート打撃形式で打者と対戦。先頭打者の比屋根渉(ヤクルト)を123キロの変化球で空振り三振に仕留めた。続く辻東倫(巨人)には四球を与え、3人目の鵜久森淳志(ヤクルト)にも連続四球。結果はいまひとつだったが、最速は140キロをマークし、晴れやかな表情で引き揚げた。

心残りだった現役に、区切りをつけられる投球だった。菰野高(三重)からドラフト5位で中日入団も、投球がままならないイップスに陥った。「その時はつらかった。寮で1人で泣いていた時期もあった」。入団3年目の13年に現役を引退した。「もっと長くできると思っていた」が正直な気持ちだったが、「ドラ1(ドラフト1位)でもないのに、球団に残してもらった。感謝しかない」とマネジャーに転身した。

2軍を含め5年間マネジャーを務めた。裏方として選手、コーチらから準備、オフの練習法、配球論を聞くうちに「力を試したくなった」。2軍にいた現役時代は、なかなか目の当たりにすることがなかった一流選手の調整方法が新鮮だった。

今季途中にトライアウト受験を決め、シーズン終了後に本格的な投球練習を開始した。この日まで、捕手を座らせての投球は5度だけだった。それでも変化球も、直球も思い切り投げられた。「ブルペンに入る前、すごく緊張した。自分にもうちょっと期待はしていたが、やり切った感じはある。5年ぶりに打者に気持ちをぶつけられた」。すがすがしい気分になった。

今後はオファーがなければ、歯科技工士の専門学校に進む計画もある。自らも含め、歯で悩んだ選手を多く見たからだ。「やっぱり野球に絡みますね」。笑顔で今は語れる。【斎藤直樹】