海外フリーエージェント(FA)権を行使した西武炭谷銀仁朗捕手(31)は巨人と初交渉。原監督の「優勝するためにどうしても欲しい」の言葉を伝え聞き、移籍へと大きく傾いた。

プロ野球人生最大の決断を迫られている炭谷の心が揺さぶられた。宮崎キャンプ参加中の原監督とは初交渉で対面できなかったが、大塚球団副代表兼編成担当にメッセージが託されていた。「優勝するために、捕手の要である炭谷選手がどうしても欲しい」。獅子の正捕手を長年、務めた炭谷は素直に受け止めた。

炭谷 熱い気持ちを伝えていただいた。これからいろいろ考えるが、今の段階では原監督からそう言っていただいたのは、うれしく思います。

過去3年は小林が正捕手を務め、来季は阿部も捕手復帰する。炭谷は3年契約で出来高を含めた総額約6億円(推定)の提示を受け、正捕手を想定されているが、競争も存在する。約1時間の話し合いで「手応えはあったと思う」と好感触を示した大塚球団副代表は「小林もいるが、刺激という意味では炭谷選手は最適。以前、V9時代の話を森(元西武)監督ともお話しさせていただいたが、槌田選手、大橋選手、吉田選手とどんどん補強してそこで競争が芽生えた」と歴史を例に説いた。

炭谷も覚悟がある。「勝負の世界で生きている人間として当然のことだし、西武に残留しても変わりない。心の中のやったるぞ、というのは常に持っている」と決意をのぞかせた。

西武からも宣言残留を認められ、愛着ある球団への思いもある。一方で挑戦の本能もうずく。「長引かせたくはないけど、じっくり考えて、自分の中でいい決断を下せればと思う」。名門のユニホームに袖を通す日は近い。【広重竜太郎】