オリックスから阪神にFA移籍した西勇輝投手(28)の入団会見が14日に大阪市内で行われました。虎党の期待を背負う通算74勝右腕を取材してきた歴代担当記者がその素顔を披露します。

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歯に衣(きぬ)着せぬ物言いが印象的だった。17年4月、シーズン初登板に8回途中2失点で降板。好投もリリーフ陣が打たれてチーム開幕3連敗を喫した試合後、大勢の担当記者に囲まれながらベンチの継投ミスを次々と指摘した。それは10分近く続いただろうか。そのまま書けば「首脳陣批判」ともできる。コメントに耳を傾けながら、どう扱えばいいか眉をひそめていた。すると最後に「これは書かないで」と言い残して球場を去っていた。

異例の直言は、裏を返せばそれだけ勝負への思いが人一倍ということなのだろう。責任感は強いと言えそうだ。先発マウンドにいったん上がれば降りることを極端に嫌う。ここ6シーズンのうち規定投球回は5度到達。結果的にブルペン陣の負担を減らしてきた。

自信家の口から弱音はほぼ聞いたことはなかったが「本当にしんどかった」と振り返ったアクシデントもあった。15年4月、左顔面けいれんで予告されていた先発を回避したのだ。突然の出来事に頭がパニック寸前になったという。

「今まで運がいい方だと思っていたけど、あれでチャラ。人と話したくなかったし会いたくなかった」。夜、ベッドに入っても目が開いたまま。ばんそうこうを貼って無理やり寝たこともあったと後に聞いた。

コーチに「まずは1回野球を忘れろ」と言われたため、翌日は自宅周辺を散歩するなど、頭を空っぽにしようと努めたという。それでも気になり、テレビのスイッチをつけて試合を見た。自然と野球を考えていた。これも責任感の強さの表れなのだろう。

周囲に聞くところによると、はっきりした物言いで他者と距離が生まれるケースもあったようだ。それでも面倒見のいい一面があり、「後輩へのプレゼントが好き」と年下の選手に成績のハードルを設けながらバッグや時計を贈っていた。オリックス時代と比べ、一挙手一投足が注目されるチームに入った。その中で力を発揮できるか注目していきたい。【15~17年オリックス担当 大池和幸】