「40発打法」を習得する。巨人岡本和真内野手(22)が通算385本塁打の西武中村剛也内野手(35)と都内で昨年に続き2度目の合同自主トレを行った。今季は、6度の本塁打王から昨オフに教わったアーチ量産の心構えで、史上最年少の「3割30本塁打100打点」を達成。今回は「おかわり師匠」から40本塁打への技術を学んだ。【取材・構成=久保賢吾、島根純】

岡本の口が思わず開いた。昨年同様に行われたロングティー。中村の打球がスコアボード下に直撃した。推定130メートル超の特大弾。ボールにはバックスクリーンの黒い塗料が刻み込まれた。「さぁ、当てんと帰られへんで」。おかわり師匠の強烈なお手本に「当てたいです!」と力強くバットを握った。

秘伝「40発打法」の伝授が始まった。「今年は33本? 来年は40発やな」と大台到達のため、2つの技術が示された。

(1)「厚く、打つ」

2人の打球には大きな違いが表れた。中村は中堅へ打球が伸びるが、岡本はフェンス手前で失速した。

中村 捉える位置がボールの下だから滑って、打球がフワッと上がる。(捉える位置は)もう少し上。厚く、打たないと。

打感を「薄い、厚い」と独特の言い回しで表現した。捉える位置をもう少し上げれば、ボールとバットの接着時間が伸び、打球の強さや飛距離に直結する。数ミリ単位の差で、打球の質が変わると説いた。

(2)「脇を締めすぎない」

放物線の軌道が、もう1つの飛距離減の要因だった。中村は引っ張った打球も真っすぐ飛ぶが、岡本はわずかに左へフックした。左脇の締まりがカギだった。

中村 左脇、締めすぎじゃないかな。左脇を開けて、フライングエルボー(※1)気味でもいい。

内角打ちを得意とする巨人坂本勇らは左脇を少し開け、バットのヘッドが走るようにスイングする。岡本は左脇が締まりすぎ、ヘッドの抜けが窮屈に見えた。

中村 左脇がうまく抜けず、ボールをこねてしまってる。(ヤクルト)バレンティンとか(ソフトバンク)柳田は、スイングした後もヘッドは返らないよ。

左脇の意識を変えると、打球も変わり始めた。最初はライナーが増えたが、徐々に軌道が安定。打球のスピン音が増した。それでも新打法でフェンスは越えず、「そろそろ引き揚げようか」と声がかかった。

岡本 最後に1球、いいですか?

総復習でフルスイングした打球は、力強くバックスクリーンへぶち当たった。今季最終戦、最後の一振りで100打点を決めたように、勝負強さを証明。おかわり師匠も思わず「おぉ~」と声を上げた。

岡本は「今年もまた、新たなことを教わりました。中村さんとやらせてもらうと、打てる気しかしてこないです」と感謝した。“アーチスト”の階段を上る「40発打法」を極めていく。

※1…フライングエルボーとは、スイング前にトップを作った際に捕手側の脇を開けて肘を高く上げたフォームを指す。メジャーではエンゼルス大谷らが実践。今回はフォロースルーでの意識を示し、通常と逆の投手側の脇を開けるために用いられた。