名手が新境地を切り開く。楽天藤田一也内野手が開幕遊撃スタメンを目指す。

3度のゴールデングラブ賞に輝いた二塁に浅村がFAで加入。「現役でいる限り負けたくない気持ちはあるけど、今はもう1回優勝したい気持ちの方が少し上にある。優勝の輪にしっかりいられるよう、今は遊撃で開幕のグラウンドに立つという気持ち」と、茂木らとの定位置争いに身を投じる覚悟を明確にした。

鉄壁を誇った二塁守備同様、地道な反復作業の繰り返しでスキルを磨く。19日に京都府内で公開した自主トレ。ポケットがなく平らな小型練習用グラブを使ったペッパーで、足の出し方、打球への入り方、捕球位置を丁寧に確認した。ノックは三塁と遊撃のみ守った。「二塁はずっとやっている(から大丈夫)。今までと見ていた角度が変わるし、しっかり勘を戻したい。まずは出られるところ。いつチャンスが来るか分からない。そうなった時に、準備不足にならないように、頭の中でいろんなイメージを描いていく」と言った。

独自の守備理論の一端が、意外な形で垣間見えた。練習を見学したユーチューバーのクーニン(34)を指導。16年にはダルビッシュや田中、大谷の合同自主トレにも参加した「球活アンバサダー」。本職は外野手だが、藤田の助言でみるみる上達した。(1)重心がぶれるから左足の前で捕ることにこだわらなくていい(2)腰は落としすぎず、脱力を心掛ける。グラブが地面に届けば、やや腰高でもOK…と要点を絞ってレクチャー。チャンネル登録者30万超の元高校球児を「教えるのが上手で、目からうろこしかない」と感激させていた。

「(7月で)37歳でチャレンジの年。今年1年に自分があとどれくらい現役でできるかがかかってくる」。野球人生をかけた挑戦に武者震いした。【亀山泰宏】

◆クーニン 1984年(昭59)8月18日生まれ、徳島・阿南市出身。小松島高ではチームが2年春のセンバツに出場したが試合に出る機会はなかった。14年にYouTubeにチャンネルを開設。野球の裾野拡大を目指し、トレーニングなどの動画を投稿。32歳だった16年にDeNAのイベント「夢のプロテスト体験」に参加。50メートル6秒16、遠投93メートルを記録し、高田繁GMは「20歳くらいだったら育成で取った」と話していた。