矢野チルドレンが猛攻発進!! 阪神が今季初実戦となる紅白戦を行い、両軍で17得点25安打の猛打を披露した。矢野燿大監督(50)が仕掛けた競争が見事にハマり、4番争いもヒートアップ。中谷が19年チーム初本塁打の3ランを左翼に架けると、大山も負けじと適時二塁打など2安打を放った。遊撃や二塁、捕手でも火花を散らし、野手は幸先のいいスタートだ。

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曇天の宜野座に威勢のいい「花火」が何度も打ち上がった。ドンドンドドーン!! 今季初実戦の紅白戦。若トラがアーチ4発の乱れ打ちだ。両軍合わせて17得点。大技小技を織り交ぜた合計25安打に、矢野監督も「言うことないんじゃないですかね。よう打ったねえ」と声を上ずらせた。

初戦からは4番候補が火花を散らす。先に強烈なパンチを繰り出したのは中谷だ。2回、1点先制して、2死一、三塁。2ストライク後、ファウルで3度粘った末に剛腕望月の高め速球を見逃さない。豪快に強振すると高々と弧を描き、左翼芝生席に着弾した。矢野阪神の19年1号アーチ。指揮官は目を細めて言う。

「本人も手応えを感じている部分があると思う。アイツはセンターから逆方向に打つのを間違いなく意識している。いい形のヒット、本塁打もありました」

17年に自己最多の20本塁打を放ったが昨季は5本塁打に激減。この日は1回も速球を右前へ。マルチ安打を記録した。外野の一角を狙い、中谷も「みんな打っているなか、しっかり打てたのはよかった。(本塁打も)追い込まれて、いろんな球に対応しようとするなか、とらえられてよかった」と胸をなで下ろした。

負けじと発奮したのが、4番の有力候補大山だ。2回に痛烈な左前打を放つと3回は詰まりながらも右翼線に適時二塁打をマーク。2安打も「今日は悔しい。安打は出ましたけど、まだレベルが低い」と表情を引き締める。新外国人マルテが4番の最右翼だが矢野監督は「僕の一番の思いは、生え抜きの若い選手がマルテを押しのけてやってくれること」と言い、昨季11発の大山に期待を寄せる。

生え抜きの大砲対決だ。矢野監督がランチタイムに「オイ4番!!」と声を掛けると、中谷も大山も振り向いた。指揮官は言う。「いい意味で、もっとその気になって俺が打ってチームを勝たせてやるというモノを出してくれたら。本当にいいスタートを切った」。身内を蹴落とす仁義なき戦いが、いきなり最高潮に達した。【酒井俊作】

○…矢野阪神の今季初実戦はノーサインだった。一、三塁のコーチボックスは無人のまま、試合が進んだ。犠打も進塁打もすべて、選手の決断に委ねた。前日6日も矢野監督が「サインなんか出さない。指示待ちでは困る。サイン待ってるようじゃ、あまり成長しないと思う」と説明していた。