「ハマの番長」VS「ハマの主砲」-。夢の競演が15日、DeNAの沖縄・宜野湾キャンプで行われた。筒香嘉智外野手(27)のリクエストで早出特打に登板したのは三浦大輔1軍投手コーチ(45)。今キャンプ初の打撃投手で熱投102球。10年の同キャンプ以来という対決の結果は…。

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午前9時前、まだ人もまばらなアトムホーム宜野湾でファンの一部が、ざわめき出した。視線の先には背番号「18」がいた。ホーム用のユニホームに身を包んだ三浦コーチが一塁側でキャッチボールを開始した。ユニホームのサイズも、現役時代と同じ。帽子をグッとかぶり直し「筒香さんの頼みは断れませんよ」と笑いマウンドに向かった。

午前9時2分、筒香が軽く一礼し「バッティング行きま~す」と元気良く声を出した。番長と主砲。年齢差「18」の2人が相対した。マウンドよりも、少し前の距離からフリー打撃は始まった。

5本目の柵越えとなる右翼へ一打を記録した47球目、筒香から「三浦さん、ちょっとペース速過ぎます」との注文が飛んだ。16年に引退したとは思えない躍動感あるフォームとテンポはいまだに健在だ。84球目には「三浦さん、大丈夫ですか?」と心配されたが、「俺は大丈夫やで」と、顔色ひとつ変えずに驚異のスタミナを見せつけた。

87球目を終えると、現役時代の登場曲でRIKI(竹内力)が歌う「リーゼントブルース」が、球場内に大音量で流れ始めた。なじみのリズムに合わせて、番長も「ちょっとスピード上がったな」とノリノリ。終わってみれば102球、筒香の柵越えは15本にまで達した。午前9時20分。2人はガッチリと握手を交わした。

筒香からのリクエストだった。「三浦さんが『いつでも投げるよと言ってくれて』。貴重な時間。いい時間を過ごせた」。入団1年目の10年、シート打撃で“プロ初安打”を放った以来、9年ぶりの対戦をかみしめた。三浦コーチは「指令されたので断れないよ。ストライクを入れることが精いっぱい」と冗談を言ったが、「いつでも投げます。いい状態でシーズンに入ってほしい」と表情は真剣。ルーキーだったあの頃から日本を代表する主砲へ育った後輩の活躍を願った。

現役復帰? も感じさせる熱投だったが、筒香は「ちょっと厳しいでしょうね」とブラックジョーク。終始和やかな雰囲気で、早朝の夢の競演は幕を閉じた。【栗田尚樹】

◆三浦対筒香VTR 09年ドラフト1位で入団した筒香は、1年目のキャンプに途中から1軍合流。10年2月21日、シート打撃で三浦と初対戦した。三浦のカウント1-1から投じた129キロ外角高め直球を見逃さず、左翼越えの二塁打を放った。紅白戦2試合で通算6打数無安打で、7打席目にエースから待望の“プロ初安打”を記録した。