大学通算ゼロ本塁打の男が、12球団のルーキー最速で“対外試合1号”をマークした。楽天ドラフト6位の渡辺佳明内野手(22=明大)が16日、ロッテとの練習試合(金武)で初本塁打を放った。

6回の第2打席、追い込まれてから変化球を3球ファウルにして粘り、最後は田中が投じた138キロの内角スライダーを右翼席へ。「自分のスイングができて、すごくいい感触。高校3年の6月の練習試合以来だったので、ダイヤモンドを回る時は戸惑いました」と初々しく笑った。

活躍を聞いた祖父で横浜高前監督の渡辺元智氏も「本塁打なんか期待はしていないけど、何か持っているのは確かなんですかね」と声を弾ませた。1月の入寮時に持ち込んだ「目標がその日その日を支配する」から始まる10項目の座右の銘がつづられた色紙。自宅の床の間に飾っていたものを、祖父が気付いた時には孫が“あうんの呼吸”で既に荷物に入れていた。「私ができなかったこと(プロでの活躍)をやり遂げたい気持ちでいっているみたい。自分で考えてやっているようだから、私は何も言わない方がいいんです」。温かく見守る祖父の教えは、間違いなく息づいている。

「キャンプは2軍からと聞いていた」という新人合同自主トレで1軍キャンプに滑り込み、金森1軍打撃チーフコーチからボールの内側を打つ「理論」を吸収。久米島のMVPとして名前を挙げた平石監督を「粘って粘って、見事な打撃。評価できる」と再びうならせた。狙うのは遊撃での開幕スタメン。ほぼ大学4年時しか経験のない遊撃守備の課題は本人も分かっている。関係者が持ってきてくれたホームランボールをうれしそうに見つめつつ「シーズンで打てた時のボールを渡したい」と祖父孝行を誓った。【亀山泰宏】