衝撃の3者連続見逃し三振だ。広島の新助っ人左腕カイル・レグナルト(30=メッツ3A)が日本ハム戦の9回に登場。谷内、石川亮、横尾の右打者から、スライダー、カーブ、150キロの直球とすべて違う球種で三振を奪った。「ハンマー」と呼ばれる決め球パワーカーブの封印も解き、勝利の方程式入りを猛アピール。外国人枠の使い方に悩む佐々岡投手コーチに、うれしい悲鳴を上げさせた。

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ふだんは温厚なレグナルトが、目を血走らせたままベンチ裏に引き揚げてきた。9回の1イニングを3者連続三振締め。マックスに高まった興奮は簡単に収まらない。周囲に目もくれず、控室に消えていった。「スイッチが入ったら球場の音楽も声援も聞こえなくなる。今日は少し歓声が聞こえたけどね」。笑顔で振り返ったのは、終了後2時間近くたってからだった。

衝撃の奪三振ショーだった。先頭谷内への決め球は、外角のボールゾーンからストライクゾーンに曲げる通称「バックドア」のスライダー。続く石川亮へは、米国で「ハンマー」と呼ばれたパワーカーブ。外角のボールゾーンから真ん中低めまで曲がり落ちる軌道で、実戦ではここ2戦封印していた魔球だった。最後は横尾の内角低めに150キロの直球を投げ込んだ。いずれも見逃し。打者があぜんと見送った。

レグナルトは米国時代、6、7月に本来の腕の振りになり、9、10月が最高の状態になるという。「シーズンが深まればもっといい直球が投げられる。カーブももっと腕を伸ばしてリリースできるから、直球の軌道に近くなって打ちにくくなるはず」。さらに調子を上げることまで予告した。

新しい環境にストレスを感じた時期もあったが、日本流を受け入れる覚悟を固めている。来日前に日本野球を論じたロバート・ホワイティングのベストセラー「和を持って日本となす」を読破。広島で500ドル(約5万5000円)の自転車を購入し、通勤の足にした。この日は「『一蘭』でディナーだ」と、お気に入りのラーメン店行きを予告してサドルにまたがった。ここにきて調子を上げてきたのは、偶然ではない。

外国人4枠のうち、投手に割り当てられるのは3枠が基本線。先発はジョンソンが確定し、2軍調整中の新助っ人ローレンスも評価を上げている。リリーフ陣はレグナルトに加え、この日はフランスアとヘルウェグも好投。競争はもう少し続く。佐々岡投手コーチは「なかなか選びにくい。うれしい悩み」と明かしたが、レグナルトの快投はしっかりインプットした様子だった。【村野森】