俺が引っ張るん弾! 広島鈴木誠也外野手(24)が阪神戦の4回に、一時勝ち越しとなる特大の1発を放った。2試合ぶり3号もチームは逆転負けを喫し、単独最下位に沈んだ。若き4番は開幕から好調を維持しながらも、チームが波に乗れない状況に悔しさをにじませる。停滞感を打ち破るためにも、4番がバットで引っ張って行く。

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素振りのようなきれいなスイングから放たれた弾道は、広島の夜空を切り裂いた。1-1の同点の4回。4番鈴木はメッセンジャーの138キロにバットを一閃(いっせん)。白球は左中間スタンドを大きく越え、棒球ネットを直撃する“場外弾”で一時は勝ち越しに成功した。

「打ったのはストレート。自分のスイングでしっかり、とらえることが出来ました。勝ち越しのホームランになって良かったです」

試合中、広報を通じてコメントが伝えられた。だがチームは終盤に逆転を許した。1点を追う8回、鈴木の右翼方向へ飛んだ飛球は惜しくもフェンス手前で糸井のグラブに収まった。「結果的にアウトになったので。何とか塁に出たかったですが、また明日頑張ります」。開幕から好調をキープも、チームとかみ合わず表情は厳しいままだった。

チームは開幕から苦戦が続いている。日替わりとなっている5番はこの日、安部が入るも、4打数無安打。開幕から7試合、5番打者の打率は1割1分5厘まで落ち込んだ。後続に当たりが出ていなければ、4番へのマークは必然的に高くなる。相手投手との相性などで打線を入れ替えるなど、首脳陣は策を講じるが、それも空転している。

チームは連敗で単独最下位に沈んだ。広島の桜は満開を迎えても、今季の緒方広島はまだ五分咲き。緒方監督は開幕時「形なんて決めていない。シーズンに入っても試しながら戦っていかなければいけない」と、厳しい戦いは覚悟していた。スタートでつまずいても取り返す力がなければ、4連覇など口にできない。チームの先頭に立つ覚悟を決めた4番は誰より自覚している。試合後、厳しい表情を崩さなかった鈴木はこれからも、何度でも、何度でも、バットでチームを鼓舞し続けていく。【前原淳】