日本ハム宮西尚生投手(33)がプロ野球史上初の300ホールドを達成した。ロッテ2回戦(札幌ドーム)の7回に登板し、クリーンアップを3者凡退に打ち取ってチームの連勝に貢献した。「奇跡の左肘」を持つ鉄腕サウスポーが前人未到の大記録を打ち立てた。

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宮西がマウンドに仁王立ちした。7回2死、昨季まで同僚のレアードの打球は、くしくも同期入団の中田が守る一塁への飛球となった。3者凡退で仕事を終えた左腕は「これからプロを目指す子どもたちに、ホールドでも目立てるんだぞというのを知ってもらえたら」。直球とスライダーだけで、こつこつと積み上げたホールド数は、636試合目でついに前人未到の300に到達した。

昨年7月に巨人山口の日本最多ホールド記録を更新してから、孤独な旅が始まった。入団1年目から11年連続でシーズン50試合以上の登板を続けるタフネスさ。正真正銘の「鉄腕」の秘密は、奇跡とも言える商売道具の左肘にある。

昨オフ、2度目のクリーニング手術に踏み切った時だ。その左肘の状態に、国内で肘の権威とされる医師が驚いた。長年の酷使で、投手の命とも言える内側の側副靱帯(じんたい)は、すでに手術が必要なほど伸びきっていた。

宮西 でも、僕の場合はなぜか伸縮性が保たれていた。だから、普通に投げられる。何人も診察してきたドクターが「こんな人は見たことがない」って言うほど珍しいことらしく、この体に生んでくれた両親には感謝しかない。

投球時に左肘が外側に倒れがちなのは、伸びてなお柔軟な靱帯に起因する。

宮西 外側に遊離軟骨ができやすくて除去手術は必要だけど、靱帯よりは回復も早い。特殊な体でメリットの方が多いかな。

痛みが出ると左肘の位置など投げ方を変える器用さもあり、リスクの回避につなげてきた。この日も、ボール2つ分、角度を変えて2連投を乗り切った。「僕にはまだ岩瀬さんという偉大な目標がある。目標がないと、人って頑張れない」。中日岩瀬の15年連続50試合登板まで、あと4年。身につけた技術と“奇跡の左肘”を支えに、鉄腕の1人旅は続く。【中島宙恵】

▼通算300ホールド=宮西(日本ハム) 13日のロッテ2回戦(札幌ドーム)で今季6ホールド目を挙げて達成。初ホールドは08年4月4日のオリックス1回戦(京セラドーム)。現在のホールドは05年から採用され、300ホールド達成はプロ野球史上初めて。

 

◆宮西尚生(みやにし・なおき)1985年(昭60)6月2日、兵庫県生まれ。市尼崎高-関学大を経て07年大学生・社会人ドラフト3巡目で日本ハム入団。1年目からセットアッパーに定着し、11年連続50試合以上に登板。18年7月6日ロッテ戦でプロ野球新記録となる274ホールドを達成した。16、18年最優秀中継ぎ投手。17年WBC日本代表。180センチ、79キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸2億円。