“燕のゴジラ”の1発で、ヤクルトが両リーグ10勝一番乗りを決めた。村上宗隆内野手(19)が5回にバックスクリーン右へ決勝の3号ソロ。

10代での巨人戦本塁打は、球団史上“55”年ぶり。青木宣親外野手(37)の3号ソロで先制し、若手とベテラン、上位と下位がつながった。今季最多17安打で、巨人との2日連続の乱打戦を制し、4カード連続で勝ち越し。日本一に輝いた97年以来となる15戦での10勝で、首位をキープした。

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高卒2年目らしい初々しいヒーローインタビューだった。村上は12球団で10勝一番乗りの質問に「全然僕のおかげじゃないので、先輩方の後ろについていって、背中を見ながら頑張りたいです」。帽子を取り、ファンへ丁寧にあいさつ。「顔は変わってないかもしれないけど、心では緊張してました。自分の声が後ろから聞こえるから…」と苦笑いで振り返った。

打席では打って変わり、豪快だった。6-6の5回。先頭でカウント1-1から巨人宮国の141キロ直球をバックスクリーン右へたたき込んだ。第1、2打席と凡退しており「思い切って振ろうと思った。(スタンドに)いったかなと思った」と一振りで勝ち越し。大勝への流れを作った。

試行錯誤の過程で、生まれた本塁打だった。9日の広島戦前、「バットを貸してください」と青木に頼んだ。開幕から9試合で打率1割3厘と苦しみ「ヘッドを感じにくい」と相談していた。そこで約86センチ、880グラムの自身のものよりも、ヘッドが利く約85センチ、890グラムの青木モデルにチェンジ。「感触がいい」と浮上のきっかけとなる2号ソロを放った。この日からは、自身のモデルを改良し「芯を細くした」(村上)タイプを使用。“青木効果”で外角高めの直球にヘッドを利かせ、最高の結果につなげた。

青木は、ともに米ロサンゼルスで自主トレを行った愛弟子に「村上で勝ち越したことは大きい。結果が出てきているのは、方向性が合っているということ。バットも重要だからね」と目を細めた。自身の3号ソロで先制しており、ベテランと若手がそろって結果を出して巨人に打ち勝った。「下位も当たり始めているし、うまく“線”になっている。チームの形はすごくいい」と手応えを口にした。

村上は開幕からスタメン出場を続けるも、まだ打率は1割9分2厘。巨人打線をけん引する4番岡本の姿を見て「早くヤクルトの中心として引っ張れるようにしたい」と決意を新たにした。首位をがっちり守った絶好調の燕打線。まだまだ止まらない。【保坂恭子】